朝そばで満たされた
重たいお腹を抱えながら、
少しのんびりと歩き始めた。

せっかく横浜で過ごす最後の朝なのだから、
今日はいつものフルコースを巡ろう。
となれば、次に向かうのは大岡川沿いだ。

そのとき、ふと思い出した。 
そうだ。明日の朝、
電車の中で食べるパンを買っておこう。
昨日、たまたまファミマで見つけた
新商品のサンドイッチが、
とても美味しかったのだ。
もう一度食べたくなり、
大きなファミマなら
きっと置いてあるだろうと思って、 
関内駅の斜め前、
交差点の角にあるお店へ入った。

店内に入ると、
サンドイッチコーナーへ一直線。
けれど、残念ながら目当ての
新商品は見当たらなかった。
何度か棚を見直してみたものの、やはりない。
仕方がない。こうなったら、
大岡川沿いを歩きながら、
ファミマ巡りをして帰ろう。

昨日、SUPで進んだ同じ水の路を、
今朝は川沿いから魅つめながら歩いている。
昨日は水面から街を見上げ、
今日は街から川を見下ろしている。
同じ場所なのに、
目線が変わるだけで、
風景はまるで違った表情を魅せる。

私は、川の上から見上げた景色のほうが、
少し美しく感じられた。
橋も建物も、いつもより大きく、新鮮に映り、 
まるで一枚の絵の中へ入り込んだようだった。
川の中には驚くほどたくさんの魚がいて、
まるで水族館のようだったことも思い出す。

そういえば、白い洗濯ネットのようなものが
浮かんでいると思い、
パドルでつつこうとしたことがあった。
けれど、それは洗濯ネットではなく、
クラゲだった。
ぽよぽよとしたクラゲが、
川のあちらこちらに浮かんでいた 
光景まで蘇り、
思わずひとりで笑ってしまった。

昨日、SUPであれだけ頑張ったのだから、
今朝は筋肉痛で、
体のあちこちが
痛むのではないかと思っていた。
ところが、不思議なことに、
ほとんど痛みはない。
もしかしたら、
やって来るのは明日なのかしら。
それとも、すっかり忘れた頃に、
「ああ、これだったのね」と、
遅れて姿を現すのだろうか。
今のところは、
昨日の頑張りを感じさせない体に
安心しながらも、
まだ油断はできないなと思った。

日ノ出町から黄金町へ向かって、
大岡川沿いの歩道を歩いていると、
「この歩道、
前からこんなに広かったかしら?」 
と思うほど、
馬車道の歩道にも負けないくらい、
ゆったりと幅広く整備されていた。  

そういえば、お花見の季節には、
この場所にずらりと屋台が並んでいた。
あれだけのお店と人が集まるのだから、
これくらいの広さがなければ
収まらないのだろう。

朝の静かな時間、
広い歩道を独り占めするように歩いていると、
なんとなく優雅な気分になってくる。

すると、川の上に
SUPをしている人の姿が見えた。
あ、今朝も出ている。
昨日の私とは違い、
さすが競技会に出る選手だ。
パドルを操る動きには無駄がなく、
ボードは水面を滑るように進んでいく。
動きはなめらかで、とにかく速い。

朝7時ごろから大岡川を颯爽と往復し、
そのあと会社へ出勤する方なのだそうだ。
朝から素晴らしい街並みを川の上から見上げ、
それを水面をスイスイと進みながら
楽しめるなんて、なんとも贅沢な時間だ。
出勤前のわずかなひとときに、
こんな清々しい朝を過ごせることが、
とても羨ましく思えた。

私も一度でいいから、
大岡川のような川を颯爽と往復し、 
心も体もすっきりと目覚めた状態で
会社へ出勤してみたい。 
もっとも、昨日ようやく
少し余裕が出てきたばかりの私には、
まだまだ遠い世界だけれど……。

さて、帰るまでのサンドイッチ探しは、
なかなか難航している。
旭橋で曲がらず、
黄金町のほうまで足を延ばせば、
あと二軒ほどファミマがあるはずだ。
その二軒に望みを託して立ち寄ってから、
帰ることにしよう。

清々しいSUP選手の朝練習を眺めたあとは、
再び私の小さな
サンドイッチ探しの旅が始まった。