相反する二つの雲が
織りなす美しさに心を奪われた後は、
私のパワースポット、大さん橋へと向かった。
そこまでは、歩いて10分もかからない。
大さん橋に足を踏み入れ、
ふと空を見上げた、その瞬間だった。
雲の向こうに隠れていた太陽が、
ほんのわずかな隙間から、
その美しく神々しい姿のすべてを
現したのである。
つい先ほどまでとは、
まるで違う表情を見せる空。
わずか数分の間に移ろう雲の形と色、
そして光の乱舞。
一瞬たりとも同じ姿をとどめることのない、
その儚くも壮麗な光景に、
私は再び息をのんだ。
これもまた、朝の神秘がなせる業なのだろう。
ほんのひとときだけ
姿を見せてくれた太陽に向かい、
私は思わず大きな声で叫んだ。
「おはよう!」
そして、もう一度。
「おはよう!」
声を放った途端、
胸の奥にたまっていたものまで、
すべて吐き出せたような気がした。
心も体もすっきりとして、
爽快感と開放感に包まれていく。
真っ白になった私が、
今日という一日の中で、
これからどんな色に染まり、
どのように輝いていくのか。
そう思うと、楽しみで仕方がなかった。
そして、ふと思った。
海に向かい、
太陽に向かって叫んでいる今の私は、
まるで昔の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』
のようではないか。
そう気づくと、神秘的な朝の中で、
ひとり少し笑ってしまった。
大さん橋を後にして、
山下公園の海沿いを歩いていると、
ところどころに設けられた植え込みに、
ひまわりがあふれるように咲いていた。
鮮やかな黄色の花々が
一斉にこちらへ顔を向け、
まるで私を出迎えてくれているように見える。
その明るい色に触れた瞬間、
真っ白だった私は、
早くもひまわり色に
染められてしまったようだった。
胸の奥から元気が湧き上がり、
気持ちまでぱっと明るくなっていく。
朝の空に心を洗われ、
ひまわりの黄色に元気をもらいながら、
私は中華街へと向かった。
よく考えてみると、
今日はこのあとお店に出勤し、
明日から三日間ほどお休みに入る。
ということは、
今朝が、しばしのお別れとなる
横浜での朝ウォーキングだ。
そう思うと、いつものジグザグ中華街も、
どこかを飛ばしたり、
途中をワープしたりせず、
きちんといつもの道をたどりたくなった。
見慣れた街並みの一つひとつに、
別れを惜しむように
目を向けながら歩いていく。
媽祖様と関帝様にも、
いつも以上に心を込めてお願いをしよう。
そして、「また来ます」と、
しっかり約束してこよう。
さあ、その後は朝そばへ。
朝そばとも、今日を最後に
しばしのお別れだ。
できることなら、
いつもよりゆっくり味わいたい。
けれど、今朝ものんびりしてはいられない。
それでも、そばの香りと出汁の味わいを
一つひとつ心に刻みながら、
その向こうに待つ故郷の風景を思い浮かべ、
今朝のひとときを楽しむことにした。
今日選んだ天ぷらは――結局、イカ天だった。
このそば屋さんは、
朝、開店と同時に相変わらずの大忙しだ。
店内には注文の声が飛び交い、
食べ終えたお客さんは
「ごちそうさま」と声をかけて、
足早に店を出ていく。
その合間を縫うように、
外で順番を待っていた人たちが、
次々と中へ入ってくる。
誰ひとりとして、
我先にと割り込もうとはしない。
その様子が、なんだかとても紳士的に見えた。
立ち食いそば屋ではあるけれど、
ここはまるで、
紳士たちが集うそば屋のようだなと思った。
そばの味も、出汁の香りも、
朝の店内に満ちる活気も、
今日はいつも以上に心へ刻んでおこう。
しばらく来ることはできないけれど、
その分、次にこの暖簾をくぐる日を
楽しみにしていたい。
今日も、お腹も心も満たされた。
「また来ます」そう心の中でつぶやきながら、
名残惜しく店を後にした。
朝のひとり言〜太陽にほえて、朝そばへ〜
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