昨夜、
山あいに
ひとつの灯りを魅つけた。
あんなところに
灯りなんてあったかしら。
しばらく魅ていると、
その灯りは
少しずつ、少しずつ
空へ昇っていった。
ああ、月だったのね。
満月ではない。
まだ満ちきらない、これから満ちてゆく月。
赤銅色の静かな光をまとい、
山の向こうから
ひょっこり顔を出していた。
その姿を
私はずっと魅ていた。
そして今朝。
同じ山あいから、
また丸い光が顔を出した。
今度は
ピンクゴールド。
昨夜の静けさとは違う。
さあ、今日を生きよう。
そう言っているような、
明るく、あたたかな光だった。
不思議。
昨夜の月と今朝の太陽。
違うものなのに、
心の中で重ねてみると
ぴたりと重なった。
丸いかたち。
山あいからひょっこり現れる姿。
そして、光。
けれど
光の色は違っていた。
昨夜の月は、
一日を終えた私を
静かに眠りへ連れてゆく色。
今朝の太陽は、
これから歩き出す私を
前へ送り出す色。
休む光と、
生き始める光。
その二つのあわいを
夜から朝へ
時間が静かに流れていった。
私は、
この「あわい」が好きなのだと思う。
夏と秋のあわい。
まだ肌には
夏の暑さがまとわりついているのに、
風の中に、
花の中に、
空の高さに、
小さな秋がそっと混じり始める。
季節はきっと、今日まで夏、
明日から秋、
そんなふうにはやって来ない。
夏の中へ
秋が一滴ずつ落ちてきて、
いつの間にか
景色の色を変えてゆく。
昨日のディナーにも
そんな季節があった。
夏の名残り。
今という季節の盛り。
そして
これから訪れる秋。
料理の中にも
季節は生きていた。
だから今夜は、
我が家の食卓にも
小さな季節を並べてみよう。
夏の名残りの鱧。
今を味わう鰹。
そして、
秋を連れてくる松茸と秋刀魚。
ひとつの食卓の上に
過ぎゆく季節と、
今ここにある季節と、
これからやって来る季節を並べる。
それを家族と一緒に味わう。
そんなことが
私は好きなのだ。
デパートの食材の中に
季節を魅つけること。
ひと皿の料理の中に
旬を感じること。
道端の小さな変化に
次の季節を魅つけること。
そして、昨日とは少し違う自分を
自分の心の中に魅つけること。
自然も、
季節も、
人の心も、
立ち止まってはいない。
少しずつ、
少しずつ、
色を変えながら流れてゆく。
昨夜の月も、
今朝の太陽も、
きっと同じことを私に魅せてくれた。
終わるものがあり、
始まるものがある。
去ってゆく季節があり、
やって来る季節がある。
そして私は、
その真ん中を歩いている。
昨夜の赤銅色を
心の片隅に残したまま、
今朝のピンクゴールドを
胸いっぱいに浴びながら。
満ちてゆく月のように。
移ろってゆく季節のように。
私の心もまた、
今日という新しい色へ
ゆっくり、ゆっくり
満ちてゆく。
月と太陽のあわいに✨
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