ああ、やっとできた。
やっと完成した。
時刻を見ると、もう16時を回っていた。
サクッと終わるはずだった。
フォーマットもあるし、下描きもある。
あとはデータに落とし込むだけ。
そう思っていたのに、
いざ形にしてみると、
頭の中で描いていたイメージの
あちこちに小さな抜け穴が見つかった。
ここが足りない。
ここは少し違う。
椅子にもたれて何度も伸びをしながら、
そのたびに考え直し、
埋めて、
修正して、
また書き直した。
人に頼めば、きっともっと簡単だった。
でも、面倒でも自分でやるからこそ
魅えるものがある。
頭の中だけでは気づかなかっ
た抜けや曖昧さが、
形にした途端、くっきりと姿を現す。
そうして一つずつ穴を埋め、
ようやく仕上がった。
いつもながら、自分で仕上げたものは美しい。
芸術作品とはまったく違う、
ただのテキストデータ。
それでも、この世に一つしかないと思うと
妙に愛おしい。
出力したA3の紙を大きく広げ、
目の前に掲げてみる。
なんだか、「頑張りました」と
表彰状をもらったような気分になった。
……いやいや、
こんなことをしている場合ではない。
完成したデータをメーリングリストで
スタッフへ送る。
これで明日の打ち合わせは大丈夫。
そして私の頭の中では、
仕事とは別の設計図がすでに広がっていた。
今夜は、我が家の秋を先取りする食事会。
作業の途中、
何度も意識はデパ地下へ飛んでいた。
会社とデパ地下を
頭の中で何往復しただろう。
買うものはもう決まっている。
松茸。
鰹はやめて鱧にしよう。
お吸い物には蛤。
すだちも忘れてはいけない。
そして秋刀魚。
新物がきっと並んでいるはずだ。
売り場の場所まで
頭の中のフロアマップに印をつけ、
一番早く、
一番効率よく回れるルートまで組み立てた。
さっきまで仕事の設計図を
完成させていた私が、
今度は食卓の設計図を抱えている。
デスクの上をささっと片付けた。
よし。いざ、デパ地下へ。
二枚目の設計図✨
勃つねで応援-
-
共有で応援