長い一日が終わろうとしている。

猛暑続きで大変な日々だったけれど、
今は涼しい風が吹いている。

風さん、そこにいるの。
なんだか今日は仕事ばかりして、
帰ってからも料理に夢中になっていたから、
あなたと話すのは
ずいぶん久しぶりのような気がする。
やっと今日一日も終わろうとしているわ。

さっき、
明日の会合に参加する方から連絡があった。
どうやら明日は夕方から雨になるらしい。
そう思っていたら、
空の向こうから
ゴロゴロと低い音が聞こえてきた。

もしかして、雷?
空を魅る。
昨日、月を魅たあたりを探してみたけれど、
今日はその姿はなかった。
けれど——
光が見えた。
ピカッ。

ぼんやり空を魅ていた、そのときだった。
白い稲妻が二筋、夜空にはっきりと走った。
雷にはこれまで
何度も何度も出会ってきたはずなのに、
こんなふうに稲妻そのものを
くっきり魅たのは、
もしかすると初めてだったかもしれない。

そして少し遅れて、
またゴロゴロと雷の音が響いてきた。
同じ光でも違うわね。
昨日の月は、静かに夜を照らしていた。
今夜の光は、一瞬で暗い空を駆け抜けていく。

けれど、こうして魅ていると、
稲妻もまた夜空を彩る
ひとつの美しい光なのかもしれない。
月の光だけが美しいわけではない。
穏やかな光もあれば、
胸を驚かせるほど強い光もある。

空は毎日、同じ場所にありながら、
決して同じ表情を魅せてはくれない。
そう思うと、今日という一日も同じだった。

仕事に心を向け、
家に帰れば料理に夢中になり、
気づけば風さんと話すことさえ忘れていた。
けれど最後には、
こうして風に包まれ、
雷の音を聞きながら空を魅ている。

今日の物語も、
いよいよ最終章に入ろうとしている。

そして今日、もうひとつ小さな偶然を知った。「銀の翼」という名は、
童謡『浜千鳥』の一節に由来するという。
ここにもまた、千鳥がいた。
朝から夜まで別々に魅えていたものが、
最後になって細い一本の糸で、
そっと結ばれていく。

ゴロゴロ——。
また遠くで雷が鳴った。
風さん、今日は月ではなく、
この光を一緒に魅ていようか。
暑かった一日に涼しい風が吹き、
真っ暗な空には白い稲妻が二筋走る。

明日は雨になるのだろうか。
そして、どんな空が待っているのだろう。
それは明日の私と、
明日の風さんに預けよう。

さあ——今日という一日の最後のページは、
どう書き記そうか。

私は今夜、
月の代わりに夜空を走った二筋の白い光を、
そっと心に挟んでおくことにした。