今朝、
大きな、大きな雲の中に
神様を見た。

天空から慌てて舞い降り、
両手をまっすぐ差し出して
何かを大切そうに抱えていた。

落とし物?もしかしたら、

そこにあったのは
今日の私が描かれた未来の地図。
見てはいけないものを
私に見つかりそうになって、
慌てて拾いに来たのかもしれない。

ふと思った。
神様の服には
ポケットがないのかしら。

いいえ。きっと神様は
とても大きなポケットを持っている。
深くて、
暗くて、
底なんて誰にも見えない
不思議なポケット。

神様は天空から
私たちの世界を魅つめながら、

ある日は喜びを、
ある日は戒めを、
ある日は偶然を、
ひとつずつ取り出して
地上へ放つ。

二筋の稲妻。
銀の翼。
激しい雨。
あれは戒めだったのだろうか。
それとも、
忘れかけていた何かを
もう一度思い出させるための光。

雨はすべてを濡らしながら、
新しい朝へ命を渡す
神様の一滴だったのかもしれない。

ポケットには
旬の心まで入っている。

ひと匙の感動。
ひとつまみの驚き。
ほんの少しの寂しさ。
そして時々、
思いがけない場所へ続く
どこでもドアまで。

欲しいものを
すぐに出してくれる日もある。
でも――
どれだけ待っても
何も出してくれない日もある。

それもきっと、
神様からの贈り物。

「もう少し、自分で歩いてごらん」
そう言って
ポケットの中で
大切な何かを握ったまま
知らん顔をしている。

だから私は歩く。
転んでも、
迷っても、
また立ち上がって歩く。

その先で突然、
ぱあっと、大きな喜びが
ポケットから
飛び出すことがあるかもしれない。

幸運かもしれない。
新しい扉かもしれない。
あるいは、
昨日まで知らなかった
新しい私かもしれない。

神様のポケットは大きい。
そして、深い。

朝にはまだ
「未来」と呼ばれていた一枚の地図も、
夜になれば
私が歩き、感じ、笑い、迷い、
自分の足で描き終えた
「今日という物語」に変わっている。

だから私は
ポケットの中を覗かない。
……覗いてみたいけれど。

だって、
何が出てくるかわからないから
今日という日は面白い。

それに――
神様のポケットだって
たまにはほころぶかもしれない。

そこから思いがけないご褒美がころり。
と落ちてきたなら、
私はきっと
誰よりも早く駆け寄って
拾ってしまう。

そのとき天空で神様は、
「あっ」と目を丸くするのだろうか。

しまった。
落とした。
……まあ、いいか。
そんなふうに
少し笑ってくれたらいい。

今日から私は
空を見上げるたび、
雲の向こうにある
大きな、大きなポケットを想う。

さて。
今日はそこから
何が飛び出してくるのだろう。

風に揺れる心を抱えて
私はまた歩き出す。

――あら。
早速、
セレンディピティが落ちてきたのかしら。

ドキッ。