家族の運転練習に付き合っている。
「忙しいのにごめんね」
「大丈夫よ。言いにくかったんでしょ?」
「なーんか、忙しそうにしてるから……」
「気を遣わなくていいよ。
行けないときは無理だって言うから。
行きたいと思ったら遠慮せずに言って。
忙中閑ありよ!」
少し首を傾げる家族に、
その言葉の意味を説明した。
そんな何気ない会話が流れる車内に、
小さな喜びを感じていた。
ところが、道は大渋滞。
車内の時計に目を走らせる。
ちょっとヤバい。
まだ朝ごはんを食べる時間も必要なのに、
私は10時には会社へ行くと伝えてある。
けれど家族はそんなことにはお構いなし。
音楽に合わせて鼻歌を歌っている。
可愛い。可愛いんだけど……。
少しくらい気づきなさいよ!
焦りと苛立ちが、
目の前の空を覆う薄暗い雲のように、
もくもくと心の中へ積もっていく。
雨までぽつぽつ降り始めた。
とうとう10時出社は諦め、
会議には30分ほど遅れそうだと、
こっそり連絡を入れた。
でも家へ戻ってメイクもしなければならない。10時半にさえ黄色信号が灯り始めている。
そんな私の隣で、家族は呑気にあくび。
ああ、もう。
私なら時計を見た瞬間、
コースを変更して途中で引き返している。
だから人に振り回されるのは嫌なのよね。
朝ごはんなんて食べずに帰りたい。
そう言えばいいだけなのに、
その一言が言えない。
きっと家族は、
一緒に食べる朝ごはんまで楽しみにしている。
そう思ってしまうから。
今朝、自分で描いた未来の地図には、
10時からの会議まできちんと道を引いていた。でも人生の未来の地図には、
いつの間にか「渋滞」という知らない線が
一本書き足されていた。
仕事の未来は、できるだけ見えるようにする。
人生の未来は、全部見えないから面白い。
……なんて、
ついさっきの私は格好よく思っていたけれど。
神様。
いきなりこう来ましたか。
ポケットから出すもの、
朝からちょっと手厳しくない?
忙中閑あり、のはずだった✨
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