お店からの電話で目が覚めた。
次のご予約は23:00〜だったので、
22:00まで眠り、
ゆっくり帰り支度をするつもりだった。
けれど、その前にお仕事が入ったらしい。
アラームより先に起こされてしまった。
1時間ほど寝たのかな。

外は、ものすごい雨。
明日にかけて天気は荒れるそうだ。
靴まで濡れているようで、なんだか気持ち悪い。「早いのでは?」
風さんもびっくりしていた。
「嬉しいことに、
その前にご予約いただいたのよ」
「そう」そして、次のドアへ。

エレベーターホールまで
迎えに来てくださったあなた。
服装をお聞きしていたから、
姿を見た瞬間、すぐにわかった。
あなたも私に気づいてくださり、
向き合って挨拶を交わす。
とても穏やかで、温かな笑顔だった。

お部屋に入ると、
すぐにいろいろなお話をした。
観光に来ておられるというあなたに、
どこから来られたのですか、と尋ねる。
その地名を聞いた瞬間、
私の心にひとつの風景が蘇った。

山の中の素敵な旅館。
川の流れと深い緑。
そして、感激したお料理。
思い出しただけなのに、
爽やかな自然の風が
心を吹き抜けていくようだった。

やがて話は神社仏閣へ。
それは私も大好きな世界。
あなたの言葉がよくわかる。
私の言葉も、あなたに届いている。
気がつけば二人の会話は、
現実のお部屋を飛び越えて、
神の世界へ、仏の世界へと遊びに行っていた。
それが、とても楽しかった。
そして、嬉しかった。

やがてあなたの体に、
そっと、優しく触れていく。
あなたがその温もりを
受け止めてくださることが、私は嬉しかった。

きっと最初に交わした神と仏の話の中で、
すでに心と心が触れ合う場所を
見つけていたのだと思う。
あなたの胸に抱かれながら、
なぜだろう。
心が少しずつ清らかになっていくようだった。

外では激しい雨が降っている。
けれど、その雨音さえ
遠くなった二人の間には、
どこか幽玄で静かな空間が広がっていた。
そこで私たちは、
ただ互いの温もりを感じながら
抱きしめ合っていた。

初めて逢ったあなた。
それなのに、忘れられない夜になった。
またぜひお逢いしたい。
あなたも同じ気持ちでいてくださったことが、
何より嬉しかった。

やっぱり、心はつながっていたのだろう。
そんな温かな余韻を胸に残して、
私は静かにお部屋を後にした。