すっきりと目が開いた。
まだ4時半のアラームは鳴っていない。
そう思って時計を見ると、6時だった。
あれ。アラームを止めた記憶はまったくない。
けれど不思議と寝坊したという
自己嫌悪はなかった。
昨日眠ったのは2時。
4時半に起きていたら
2時間半しか眠れていなかった。
きっと体が「もう少し眠りたい」と言い、
心がその声に素直に従ったのだろう。
4時間眠った体は軽かった。
体が弾むと、心まで弾む。
外は昨日から続く雨。
気分は明るいのに、空は薄いグレーだった。
その裾に、
少しだけ濃いグレーの雲が
煙のように残っている。
昨日拾ったたくさんの風景を、
まだ心が
全部取り込みきれていないのかもしれない。
「ちょっと待って。
まだ養分にしているところだから」
心の芽が、そんなふうに言っている気がした。
いつもより1時間半ほど遅い街には、
いつもとは違う朝があった。
駅の近くでは、
雨の中、ほうきとちりとりを手に
掃除をする人がいた。
こんなふうに毎朝誰かが整えてくれているから、私はいつもきれいな街を歩けるんだ。
車も次々と走っていく。
いつもなら静まり返った朝の中で、
私だけが一日の物語を
始めているように感じるのに、
今日は街のみんなと
「よーい、ドン」と
一緒に走り出したようだった。
足元の水たまりには、
雫がぽつり、ぽつりと落ちていた。
大きな波紋。
小さな波紋。
深く広がるもの。
浅くほどけるもの。
同じ雨粒なのに、
ひとつとして同じ広がり方をしない。
その丸い世界を見ていると、
以前魅た草間彌生さんの
水玉の世界がふっと心に浮かんだ。
私は上手く絵を描くことはできない。
でも、私の目で魅た世界を、
心で感じた世界を、
言葉に乗せて魅せることなら
できるかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、
新港中央広場の真ん中に
一本の大きな木が立っていた。
こんな木、あったんだ。
見上げると、
天狗のうちわのような葉が
風に大きく揺れている。
幹には名札のようなプレート。
「ユリノキ」
いつもそこにいたはずなのに、
私は今日初めて、その木の全身を見上げた。
明るい時間に歩いたから見えた姿。
遅れたから出逢えた朝。
雫は足元で波紋をひらきながら、
私の朝まで、静かにひらいていった。
雫、朝をひらく💧
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