目が覚めて、スマホを手に取った。

時刻は21時を少し過ぎていた。
スマホを胸の上へと降ろし、
しばらく天井を見つめる。

えーっと、寝たのが19時過ぎだったから、
ちょうど2時間寝たみたい。
先の睡眠貯金と合わせると、
4時間ほど寝たのかあ。

ピローン。えっ? 何の音?
天井を見つめたまま、しばらく考えた。
最後の方しか聞き取れなかったけれど、
この音は……お店からのメールの音。
開いてみると、お仕事が入ったみたい。
嬉しいな。

桜木町の方のホテルだった。
終わる時刻を確認すると、
ちょうど私の終了時刻といいタイミング。
そろっと今日の居場所を片付け始め、
送っていただく車へと向かった。

外へ出ると、もう雨は止んでいた。
少し肌寒い。
でも昨日のことを思えば、
この肌寒ささえ暖かいと
言った方がいいのかもしれない。
よかった。
あれ、風さんの姿が見えないな。

そして、本日最後のドアが開きました。
「はい」お部屋の中から
聞こえてきた軽快な声。
なんだか、
とても気さくなあなたのような気がした。
迎えてくださったのは、
爽やかな笑顔がとても素敵なあなた。
やっぱり声から感じた通り、
とても気さくな人だった。

ベッドに隣り合わせに座ると、
いろんな会話がお部屋の中を飛び交い始めた。

なんだろう。
あなたとはすごく話が合う。
話のリズムまで心地よく重なっていく。
日本各地の話をしていると、
まるで二人であちらこちらを
旅しているみたいだった。

お互いに知っているご当地の話になれば、
思わず熱が入る。
楽しい。
そんなプロローグを心ゆくまで楽しんだ。

楽しみすぎて、
そのあとは少し慌ててしまったけれど、
あなたは「そんな時間があった方がいい」と、
大きな心で受け止めてくださった。

そっと触れる。
優しく触れる。
そのたびに
あなたから伝わってくるものが嬉しくて、
私の感覚も少しずつ研ぎ澄まされていった。

たくましい腕に抱かれ、
スポーツマンらしい胸に顔をうずめる。
すると、お部屋の中を何かが駆け巡り始めた。

テンポよく、リズミカルに。
そして情熱的に。
まるで二人の間から生まれた旋律が、
お部屋いっぱいを
ぐるぐると巡っているみたい。

私はまた、耳を澄ませていた。
心に響く、とても素敵な音楽だった。
ありがとう、あなた。
またこちらへ来られることがあれば、
ぜひ呼んでください。
また逢える日を楽しみにしています。

心に残った旋律の余韻を抱えながら、
お部屋を後にした。

外へ出ると――風さんがやってきた。
「もう終わったの?」
そうよ、終わったわ。
なんだか風さん、久しぶりね。
今日は疲れて、どこかで休んでいたのかな。
「そうよ」
ふふっ。そうだったのね。

じゃあ風さん、
私は車に乗るから、
後からついてきて。
そう言って車へ向かう私の胸の奥では、
さっきまで聴いていた旋律が、
まだ静かに鳴り続けていた。