まだ雨は降り続いていた。
風はほとんどなく、
風さんの姿もない。
巡り木のモチおじさんとナゾちゃんは、
商店街の灯りに照らされ、
葉の間から光をこぼしていた。
それは昼間の木漏れ日とは少し違う。
外から照らされているというより、
二人の内側にある静かな輝きが、
雨の朝へそっとこぼれ出しているようだった。
長い水たまりには、雨粒が次々と落ちていく。
波紋というより、
ぶくぶくと小さな泡を生み出しているみたい。
「あ、風さん。おはよう。やっと来たの?」
「ちょっと寝坊しちゃった」
やっと現れた風さんに笑いながら歩く。
耳を澄ませると、
まだ開いている店からカラオケが聞こえ、
人の話し声が混じる。
24時間営業の店の明かりは、
まるでモールス信号のよう。
いつも聞こえるカラスの声だけがない。
雨宿りでもしているのかな。
時刻は4時44分。
444。
以前少し夢中になった
エンジェルナンバーを思い出した。
積み重ねてきたものが、いつか形になる――
そんな意味があるらしい。
私には少し思い当たることがある。
まだ積み始めたばかり。
形になるのは、もう少し先。
それでも今朝、
この数字に巡り逢えたことが嬉しかった。
昨夜眠ったのは1時48分頃。
睡眠時間を数字にすれば、
眠たい、
しんどいと思ってしまいそうなのに、
今朝の心では睡眠時間の数字より、
444のほうがずっと大きく場所を占めていた。
久しぶりに真っ暗な馬車道を歩く。
私は、みんなが眠っている間に
一足先に新しい朝を始めるのが好きだ。
暗がりを歩いているうちに、
やがて朝日が昇る。
日は、必ずまた昇る。
暗闇の先で浴びる光は、
私にとって朝からもらうご
褒美のようなものだ。
濡れた靴で歩道を踏みしめる。
ペチャ、ペチャ。
ギュッ、ギュッ。
ポツポツポツ。
ガーッと車が通り過ぎる。
信号待ち。
ここで、4分休符。
4拍ほど、静かになる。
青になれば、また演奏が始まった。
ギュッ、ペチャ、ポツポツ、ガーッ。
足元の排水溝からは、ピチャピチャピチャ。
なんだか、打楽器ばかりの演奏会みたい。
どれも雨が降らなければ聞こえなかった音だ。
晴れていたなら、
きっともっと乾いた音だっただろう。
そうか。
これは雨の音だけじゃない。
靴も、道も、車も、街も巻き込んで、
水が奏でている音楽なんだ。
そう気づいた途端、
真っ暗な馬車道が、
私だけの小さな演奏会場になった。
雨粒、道に響く💦
勃つねで応援-
-
共有で応援