屋形船がいくつも停泊する、
その向こうに空が見えた。
一面、薄暗いグレー。
けれど雲の隙間を少しこじ開けるように、
細い青空がのぞいている。
その上を幾筋もの雲が走り、
ピンクゴールドの光がそっと射していた。
まるで朝の光が、
自分の居場所を作ろうとしているみたい。
地ならし、根回し。
そんな言葉があるのなら、
これは「空ならし」とでも呼ぶのだろうか。
歩いていくと、ひまわりたちが待っていた。
少しお辞儀をしている子もいれば、
元気いっぱいにこちらを向いている子もいる。「おはよう」
一斉に声をかけてもらったような気がした。
元気のないひまわりちゃん、
もうすぐ太陽の光が来るから、
もう少し頑張って。
サルスベリの花もずいぶん少なくなった。
それでも残った花たちは、
ちゃんと笑っている。
静かな道に響くのは、
キュッ、キュッ、キュッ。
濡れた路面を踏むたび、
足元のHOKAが鳴っている。
嫌がって悲鳴を上げているのかな。
それとも、
雨の日にしか出せない
自分の音を楽しんでいるのかな。
そんなことを考えながら、また空を見上げた。
空ならしは、どんどん進んでいく。
薄暗い雲の隙間から、
青い空が広がってきた。
けれど白い雲はまだ残っている。
それは消し去られる途中なのではなく、
まるで誰かが大きな砂熊手を空に滑らせ、
青い空という庭に、
白い砂紋を描いているようだった。
その中に、真っ白な大きな雲が二つ。
あ。
なんだか、今履いている白いHOKAみたい。
私の靴が空を歩いている。
そう思った途端、
私の体まで、ふわり、ふわり。
白い雲のところまで
浮かんでいきそうな気がした。
そして――太陽が顔を出した。
横浜に来てから、雨の日が続いていた。
久しぶりに見る朝の光だった。
やっぱり、暗がりの向こうには光があった。
でも、光が今日を
明るくしてくれるわけじゃない。
今日という一日を明るくするのは、私。
朝の光は、そのための力を、
ほんの少し分けてくれる。
私はしばらく、
久しぶりの太陽を魅つめていた。
空ならしを終えた朝が、
「さあ、ここからだよ」と
言っているようだった。
白雲、空をならす☁️
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