12時半。
アイマスクをつけて、お昼寝しようと思った。
たしかに眠りについたはずだった。
けれど、すぐにメールの着信。
時刻を見ると、
眠りについてから9分後だった。

「ああ、寝られなかったか」
少し残念に思いながらも、
真っ白だった今日のスケジュールに、
ひとつ予定が入ったことが嬉しかった。

用意をして待機所を出る。
「風さん、私出てきたよ」
「早かったね」
「そうなの。
でも今日は真っ白なスケジュールだったから、
まずひとつ入って嬉しいな」

いつも歩いている大通り公園。
このあたりは「緑の森」というらしい。
へえ。
何度も歩いているのに、今初めて知った。

ホテルへ向かう途中、
オレンジ色の看板が目に入った。
「ちりめん?」
そう思ってよく見ると、ラーメンだった。

最近ちりめん山椒のおにぎりを
食べていないから、そう見えたのかな。

小粒の雨が、ぽつり、ぽつり。
でも大丈夫。
今日は折りたたみ傘を持っている。

ホテルの入口には、ハロウィンの飾り。
もうそんな季節なのね。

そして、本日最初のドアが開いた。
フレンドリーな笑顔が、
とてもよく似合うあなたが迎えてくださった。

その笑顔に吸い込まれるように、
お部屋へ入る。
ソファに並んで座り、
二言三言の自己紹介を飛び越えて、
もう会話が花開いた。

あなたもおしゃべりが好き。
私もおしゃべりが好き。
あなたは、
私の住む街が好きだとおっしゃって、
いろんなことを尋ねてくださった。

私はそれに答え、
そこからまた話が広がっていく。
初めてお逢いしたとは思えないほど、
楽しいプロローグだった。
気づけば、ずいぶん時間も押していた。

それでも、
あなたの優しい雰囲気に包まれながら、
あっという間のひとときを楽しんだ。

「またぜひ逢いに来てね」
「きっと逢いに来るよ」
「今度はゆっくり楽しみましょうね」
そんな言葉を交わしながら、
ホテルを後にした。

いつもの場所に腰掛ける。
「風さん、私ここにいるよ」
すると、風さんがやってきた。
「さっきは眠い眠いって言いながら
ホテルに向かってたのに、
今、とってもいい顔してるよ」
そう言われて、少し笑った。

私も、きっとそうだと思う。
真っ白だった午後に入った、
たったひとつの予定。
そのひとつが、
思っていたよりずっと明るい色を、
今日の午後に灯してくれた。