次のドアが開いた。
そこに立っていたのは、
やわらかな微笑みを浮かべた、
どこか品のある紳士だった。
穏やかな話し方。
落ち着いた身のこなし。
まるで最初から、
こちらをエスコートすることを
知っているような、
自然な優しさ。
「やっと逢えた」そう言ってくださった。
以前からずっと日記を読んでいて、
一度逢ってみたいと思っていた。
でもなかなか日程が合わず、
今日ようやく逢えたのだと。
その言葉を聞いた瞬間、
心がふわりと浮かんだ。
日記を読んでくれていたこと。
そこに綴った言葉を通して、
逢ってみたいと思ってくれていたこと。
それが、たまらなく嬉しかった。
ご挨拶代わりの会話を
交わしているだけなのに、
胸は少しドキドキしていた。
けれど不思議と緊張よりも、
これから始まる時間が
きっと心安らぐものになる、
そんな予感の方が大きかった。
そして、その予感は当たっていた。
あなたの優しさは、言葉だけではなかった。
ひとつひとつの仕草が穏やかで、
こちらを急かすこともなく、
いつも少し先に
気持ちを察してくれるようだった。
髪をくしゃっと撫でてもらったとき、
私はなんだか急に甘えたくなった。
ずっとあなたの腕の中にいたくなるような、
そんな安心感。
そして最後まで、
あなたはやっぱり紳士だった。
お部屋でも。
お別れするときも。
さりげないレディーファースト。
そのたびに私は、
なんだか自分まで少し背筋の伸びた
淑女になったような気分になっていた。
胸にエンブレムをつけた、
金ボタンの紺のジャケット。
そんな装いが似合いそうな人。
そして私は、その隣でエスコートされる、
少しだけ特別な自分。
まるでマイ・フェア・レディに
なったようだった。
最後に二人で泡のお風呂に入った。
ぶくぶく、ふわふわ。
真っ白な泡の向こうに、
あなたとの余韻が残っている。
あなたとの色は、白。
でも真っ白なところに
白だけでは見えないから、
その隣に深い紺を置きたい。
白と紺。
そこに、
金ボタンのような小さな光をひとつ。
延長までしてくださって、ありがとう。
秋の夕暮れのように、
しっとりと落ち着いた大人の時間。
ホテルを出ると、
もうすっかり日は暮れていた。
待っていた風さんが、ふわりと迎えてくれた。「ずいぶん長かったね」
「そうなの。なんだか今日は、
淑女になったみたいな気分だったの。
素敵な殿方にエスコートされて」
そう言って、私は少し笑った。
うふふ。
白と紺の余韻を胸に抱いたまま、
夜の街へ戻っていった。
白と紺の夕暮れ✨
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