私の心のサンクチュアリーに着いたとき、
曇り空の隙間から、
輝くようなピンクゴールドの光が
顔をのぞかせていた。
あの太陽を、
遠い昔、
厩戸の王子も魅つめていたのだろうか。
昇る太陽の光を魅つめながら、
「日出づる処」と
心のどこかでつぶやいたのかもしれない。
ほんの少し前まで、
私はただ朝の道を歩いていただけだった。
けれど、あの雲が馬の姿に見えた瞬間から、
私の心は遠い時代へと連れ出されていた。
もし、あの雲が馬に見えなかったなら。
私はこんな朝に、
若い頃の自分が夢中になって魅つめていた
厩戸の王子を思い出すこともなかっただろう。
そこから奈良の古代へと、
心の扉が
次々に開いていくこともなかっただろう。
風は強かった。
台風の兆しのような速い風に
背中を押されながら、
私の心は大和を駆け巡っていた。
飛鳥へ。
斑鳩へ。
遠い宮へ。
寺へ。
まだ国という形さえ
定まりきらなかった時代へ。
そこには、教科書の中の名前ではなく、
確かに生きていた人々がいた。
国をつくろうとした人。
誰かを信じた人。
誰かを疑った人。
愛した人。
失った人。
願いを託した人。
私は歩きながら、
その人たちが残した心の欠片を、
ひとつひとつ拾っているような気がしていた。
そして同時に、
若い頃の私の心も拾っていた。
遠い古代に憧れ、
その時代に生きた人々の胸の内を
知りたいと思い、
まだ見ぬ大和へ心を馳せていた私。
あの頃の私は、
今の私の中から
消えてしまったわけではなかった。
朝の風に触れ、
光を見上げ、
ふとした雲の形に心を動かした瞬間、
その人はちゃんと目を覚ます。
私はいつの間にか、
横浜の朝を歩きながら、
大和の時の流れを旅していた。
遠い過去へ向かっているようでいて、
本当は自分の中に残っていた
時間を辿っていたのかもしれない。
古代に生きた人々の心。
若い頃の私の心。
そして、今ここを歩いている私の心。
それらは離れた時代にあるのではなく、
ひとつの長い流れの中で、
静かにつながっている。
朝霧が大和の野を渡るように。
私の心もまた、
時を越えて遠い地を渡っていった。
朝霧、大和を渡る✨
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