今日の居場所を整え終えると、
少し早いけれどホテルへ向かうことにした。
それには理由があった。
お店へ着く前、
今日12時から呼んでくださっているあなたに、偶然声をかけられたのだ。
ふっと声の方を振り向いて、
「ああ!」
と思わず驚いた。
こんなところで逢えるなんて。
本当なら、
そのまま一緒に
ホテルまで歩いていきたかった。
けれど私は、
一度お店へ寄らなければならない。
「先に行ってて」
そう言ってその場では別れたけれど、
その偶然のせいなのだろうか。
いつも以上に、
早くあなたに逢いたくなっていた。
そしてホテルへ向かう途中。
また、あなたに逢った。
あれ。
また偶然。
思わず笑ってしまう。
もしかすると、
あなたに逢いたいと思っていた私の心が、
どこかであなたを
引き寄せていたのかもしれない。
そんなことまで考えながら、
今度は二人で並んでホテルへ向かった。
だから今日、最初のドアは二人で開けた。
「久しぶり。逢いたかったわ」
「俺もだよ」
そんな言葉を交わしながら抱きしめ合う。
あなたの温もり。
あなたの鼓動。
ああ、やっと逢えた。
そう身体で実感できる瞬間だった。
逢えなかった間のことを
二人でいろいろ話した。
笑った。
そして気がつけば、
いつものように
二人だけの流れの中へ入っていた。
でも不思議なのは、
その流れが同じではないこと。
逢うたびに、
少しずつ深くなっている。
色が濃くなっている。
そして、前よりもずっと鮮やかになっている。
私はそれを確かに感じていた。
あなたに触れられる。
優しく触れられる。
そのたびに私は素直に感じてしまう。
身体だけではなく、心の奥まで。
そんな自分が、私は嬉しい。
そして今日は、
今度は私があなたに触れる番だった。
心を込めて、あなたの肌へ触れていく。
そのときのあなたの穏やかな表情を
魅つめているうちに、
いつの間にか、
あなたが心地よさそうにしていること
そのものが、私の喜びになっていた。
人と人としてつながるというのは、
きっとこういうことなのかもしれない。
どちらか一方が与えるのでもなく、
どちらか一方が受け取るのでもなく、
触れ、
触れられ、
感じ、
感じてもらい、
その間にあるものが少しずつ育っていく。
あなたの腕の中で、
私はとろとろと
ほどけてしまいそうになっていた。
そして、そんな自分自身を感じながら思う。
私はいつも、あなたに逢える日を
待ち望んでいる。
あなたに抱かれることを喜んでいる。
そして二人でつくる世界が、
逢うたびに深く、色濃く、
鮮やかになっていくことに、ときめいている。
あなたと逢うと、いつもそんな気持ちになる。
やっぱりあなたは、
私の光る君だわ。
ありがとう。
また来月、待っていますね。
そう言ってあなたを見送った。
今、私はあなたと過ごした、
きらめくような、
とろけるような時間の余韻を胸に抱きながら、
こうして言葉を紡いでいる。
そしてようやく、風さんがやってきた。
「風さん。やっと来てくれたのね」
そうだよ。
「どこへ行っていたのかと思ったわ。
今日はあなたに声もかけずに、
早く逢いたくて
先にホテルへ行っちゃった。ごめんね」
風さんは何も言わず、
ただいつものように、
私のそばをやわらかく通り抜けていった。
その風の中にもまだ、
さっきまでの二人の世界の色が、
ほんの少し残っているような気がした。
逢瀬、色深む✨
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