いつもの場所で
日記を書こうと思っていたけれど、
外はあまりにも寒く、
お腹も空いてきたので、
いったん待機所へ戻ることにした。
まずは、おにぎりで腹ごしらえ。
それから日記を書きながら、
次のご予約は17時30分だから、
2時間くらいは睡眠貯金ができるかな、
なんて考えていた。
ところが、そんなことを思っていたら、
お仕事が入ったようだ。
日記をアップして、
急いで車の待つ場所へ向かった。
外は、ずっとポツポツと雨が降っている。
でも今日は車で送ってもらえる。
それだけで、なんだか少しほっとした。
そして、次のドアが開きました。
迎えてくださったのは、
彫りの深いお顔立ちと、
日に焼けたお肌が印象的な、
どこかセクシーな雰囲気のあなた。
出張で横浜に来ていると聞き、
「どちらからですか?」
と尋ねた。
すると、その地名は、
私が何度も訪れたことのある場所だった。
その瞬間、私の心の中で、
いろいろな記憶が一気にほどけていった。
まだ若かった頃に訪れたときのこと。
社会人になってから訪れたときのこと。
その土地でいただいたもの。
経験したこと。
立ち寄った場所。
おいしかったお酒。
思い出すまま話していると、
あなたは何でもよく知っていて、
にこやかに言葉を返してくれた。
「それ、おいしかったでしょ」
「その旅館、結構いいところだよ」
そんなふうに会話が続いていくのが、
なんだかとても嬉しかった。
初めてお逢いしたはずなのに、
遠く離れた土地に残っていた私の記憶と、
あなたの知っている世界が、
ひとつずつつながっていく。
まるで昔の記憶の糸を、
今ここで結び直しているようだった。
やがて私は、ゆっくりとあなたに触れた。
優しく、ひとつひとつ確かめるように。
あなたの端正なお顔立ちを眺めながら、
あなたの温もりを感じながら、
少しずつ表情がほどけていくのを
魅るのが嬉しかった。
そして今度は、
あなたから返ってくる優しさに、
私の方が思いがけず心を動かされた。
そのとき、ふっと懐かしい香りがした。
どうしてだろう。
初めてお逢いしたたはずなのに、
その香りだけが、
ずっと前から知っていたもののように
感じられた。
不思議だった。
あなたの腕に抱かれながら、
また心の温まるような会話を交わした。
そしてお風呂で、
あらためてあなたのお顔を魅つめていると、
その整った顔立ちの向こうに、
誠実で、
フレンドリーで、
明るく、
人を自然に惹きつけるような、
そんなあなたのお人柄が魅えてきた。
私はいつの間にか、
ますますあなたという人に興味を持っていた。「また横浜に来ることがあったら、
ぜひお逢いしたいわ」
そう伝えると、
「そうだね。また呼ぶよ」と、
あなたは嬉しそうに答えてくれた。
その言葉を、
私はきっと待っているのだと思う。
最後に残ったのは、
あなたの朗らかで、温かく、明るい人柄。
そして、遠い土地に散らばっていた私の記憶と、
今日初めて出逢ったあなたとが、
ほんのひととき不思議につながった感覚。
ポツポツと降り続く雨の中で、
またひとつ、
新しいご縁が
静かに結ばれたような気がしていた。
その余韻に、しばらく浸っていた。
……浸りすぎたのかもしれない。
ホテルに、
頼りにしていた
adidasのウィンドブレーカーを
忘れてきたことに気がついた。
もうーー、いや!
ドジ!
今日、明日、明後日と、
ノースリーブだけで耐えられるのかな。
そう思ったら、急に心配になってきた。
しかも、送迎で連れて行ってもらった
遠いホテルらしく、場所もよくわからない。
取りに戻るのも難しそうだ。
もう、これは諦めるしかないのかな。
さっきまで遠い土地の記憶に
心を飛ばしていた私が、
今度は置き忘れた
ウィンドブレーカーのことを考えている。
そんなふうに、
心はいつも自由に遠くへ飛んでは、
ふいに現実へ戻ってくる。
風さん。
今日は少し寒いから、
あんまり強く吹かないでね。
記憶、縁を結ぶ✨
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