予定通り、始発に乗った。

棚からブランケットを一枚取り、
自分の座席へ向かう。
腰を下ろすと、思いきって背もたれを倒し、
身体をゆっくり預けた。
ああ、気持ちがいい。

ちらりと窓の外を見る。
駅前のビルの壁面には、
電車の中からよく見えるように、
いくつもの広告が掲げられていた。
綺麗である必要はないのだろう。
いかつい文字。
黄色と赤。
時には目がチカチカするような配色。

ほんの一瞬でも人の目を止め、
どこかに残るために、
きっと誰かが試行錯誤して考えたのだ。

その中に、ひとつ面白い看板を見つけた。
「味わい横丁」
真っ赤な背景に、
白い提灯がいくつも並んでいる。
ああ、赤提灯なんだ。

いつも帰るときに乗っていた電車なのに、
こんな看板があることに
今まで気づかなかった。

なぜだろう。

そう考えて、ふと思った。

私はいつも、朝の光ばかりを探していた。
晴れの日も。
曇りの日も。
雨の日でさえ。
空の向こうにある光を探し、
そこに何かを感じようとしていた。

でも――もう、
無理に光を探さなくてもいいのかもしれない。
だって今は、
私の心の中にもう、
新しい光が差しているから。

急いで朝ごはんを食べた。
せっかく温めてきた
カイザーホットサンドなのに、
昨日までと同じで、味わっている暇がない。
でも今日は仕事のせいではない。
早く開けたい扉があるのだ。

昨夜、眠る前。
何気なくつけていたアニメ。
普段はほとんど音を聞いているだけなのに、
なぜか昨日は目が止まった。

胸がキュン、とした。

何、このアニメ。

妖かしと人間。
運命の花嫁。
そして、家族から冷遇されてきた
少女の前に現れる、王子様のような男性。
「君は俺の花嫁だ」
そんな世界を覗いてしまったら、
もう後には引けない。

『鬼の花嫁』
久しぶりに漫画を読む。
しかも、初めてのデジタルコミック。

私は本当は、
紙の頁を一枚ずつめくる方が好きだ。
けれど今日くらいは、それもいい。

横浜での物語を一冊閉じたばかりの私が、
今度は画面の中にある新しい物語の頁を開く。
なんだか、それさえ面白い。

今日は眠らない。
漫画を読むのだ。
もしかしたら第1巻を読み終えたあと、
駅の売店に本屋さんを見つけたら、
コミックを探してしまうかもしれない。

そんな自分を想像しただけで、
また少し胸が高鳴る。

窓の外を流れていく朝。
もう私は、
その空に光を探してはいない。
光なら、ここにある。
胸の奥に灯った小さな光を連れて、
私は新しい物語の扉に手をかけた。