運転練習を終えた朝。

お腹を空かせた私たちが向かったのは、
朝マックだった。

頼むものなんて、
もうお互い決まっていると思っていた。

私はエッグマックマフィンにサラダ、
そしてホットコーヒー。
家族はエッグマックマフィンに、
大好きなハッシュドポテト。

ところがメニューを見た瞬間、
私の予定が変わった。

月見マフィン。

黄金色の月を思わせるその名前に惹かれ、
迷わず予定変更。
久しぶりに食べるハンバーガーパティ。

もしかすると30代以来かもしれない。
ひと口食べる。

美味しい。

家族が横でニヤニヤしながら言った。
「この肉は食べられるのね」

ふふっ。

そうなのよね。
普段は肉が苦手なのに、
マクドナルドのハンバーガーには、
なぜか昔から特別な場所がある。

幼い頃、「買って、買って」と
親にせがんだ記憶。
30代には仕事の合間、
ドライブスルーで
ダブルチーズバーガーとポテトと
コーラを買った。

打ち合わせ先で
「口にケチャップついてるよ」と
言われたこともあった。
お金だけ払って商品を受け取らず、
勢いよく車を走らせてしまったことまである。

そんな昔話をしながら、
ふと二人で顔を見合わせた。

私たち、こうして二人で
マクドナルドのお店に座って
朝ごはんを食べたこと、あったっけ?

思い出せない。

もしかしたら何十年ぶりなのかもしれない。

そこから二人の心は、
手をつないだように過去へ旅をした。

幼い頃。
大人になってから。
離れて過ごした時間。
そして今。

昔は私が守る側だったような気がする。
でも、いつの間にか違っていた。
私が支える日もあれば、
家族の何気ない一言に私が救われる日もある。

私たちは、何なんだろう。

家族?
相棒?

すると、ふっと言葉が落ちた。

「パートナーよ」

ああ、そうだ。

パートナー。

どちらか一方が支えるのではない。

その時々で立つ場所を入れ替えながら、
自然に寄り添ってきた二人。

そして家へ戻ってから、
その言葉はもう一度、日常の中に現れた。

「お昼、何か買ってこようか?」
家族は、うーん、と考える。

その顔を見ただけでわかった。
「サラダ巻き? 
それと、あそこの唐揚げ2個?」

すると、満面の笑み。

「そう。お願い」

パートナーの顔だった。

そしてきっと、
私もパートナーの顔をしていた。

魅つめ合う視線の先に、
長い時間が流れているようだった。

何十年という時間をともにしてきたからこそ、
言葉になる前の
小さな気持ちまでわかることがある。

特別なことではない。

でも、その当たり前こそが、
きっと特別なのだ。

さあ、時刻は9時。
月見マフィンの余韻も、
家族の笑顔も、胸の中へ。

髪を整えよう。
メイクをしよう。
服を着替えよう。

今度は会社へ向かう私になる。
でも、ここでもカチッとは切り替えない。

今朝見つけた温かな色を
少しだけまとったまま——次の時間へ、
またゆっくりと移ろっていこう。