予定通り10時半、すっきり。

臨時の来客との用事が終わった。

そもそも今日は、来客の予定などなかった。

きっかけは昨日、
私が入れた一本の電話だった。

仕事の進み具合があまりにも横着に見えた。

担当者から報告を受け、
事情を聞き、現状をつなぎ合わせてみる。
すると、どうにも辻褄が合わない。

ここは一言、カツを入れなければ。

昨日、朝の定例会を終え、
次の会議へ移るわずかな隙間に
直接電話をかけた。

彼はもっともらしい説明を始めた。
ひとつひとつを聞けば、
きちんと対応しているようにも聞こえる。
でも、私が知りたいのはそんなことではない。

「その場を取り繕う話を聞きたいんじゃない。
最後の納期まで、どう進めるつもりなの?」

点ではなく、線。
目の前のひとつをきれいに繕っても、
次の点、その次の点へと結んだとき、
一本の線にならなければ仕事は着地しない。

昨日はつい、きつい言葉も出た。
「やる気がないなら、もういいよ」
その電話を受けて、
今朝、彼らはわざわざ私のところまで
来たのだった。

今日はもう怒ってはいなかった。
「やる気があるなら、きちっとやりなさい。
口で取り繕っていても、
いつかどこかがほころぶよ」

次に私が結果を聞けるのは、早くても30日。
それまでにスケジュールを組み直し、
抜けなく進めること。

言うべきことだけを伝え、
最後はにこやかに、
「朝早くから私の時間に合わせてくれて
ありがとう。
じゃあ、よろしくお願いするわ」
そう言って別れた。

でも、今日の教訓は彼らだけのものではない。
昨日、感情が高ぶった私は
「私ならこうする」と口にした。

私には私のやり方がある。
でも、人にはその人のやり方がある。
違う道を通っても、
同じ目的地へきちんと着地できればいい。

頭ではわかっているのに、
気持ちが高ぶると、
自分のやり方を正解のように口にしてしまう。
私も、まだまだだ。

もっと広く、大きな心を持ちたい。
何を伝えるかだけではなく、
どう伝えるか。
人を動かす言葉とは何なのか。

今日の出来事は、
私自身への小さな宿題にもなった。

さあ、臨時のお仕事はこれでおしまい。

ふっと肩の力が抜けた。

今からデパ地下へ寄って、

家族に頼まれたものを買って帰ろう。
一緒にお昼ご飯を食べよう。

私は、いただきもののへぎそば。
久しぶりのお蕎麦だ。

そう思った途端、
毎朝決めた時間に
朝そばへ通っていた頃が蘇った。

月日は、すーっと流れていく。
けれど、その流れの中には、
いろんな思いがあった。
葛藤があった。

そして私は、その時々に出逢った風景を
ひとつずつ拾い、
心へ染み込ませながら歩いてきた。

だから私は、落ち込むことがあっても、
やっぱり晴れやかなのだと思う。

パートナーにも言われた。
いつも全身が輝いているみたい。
パワフルだし、声も大きいし。
……声も大きい、は余計だけれど。
ふふ。

では、お昼過ぎまでのひととき。
荷物を最後に整えながら、
少しのんびりしよう。
そして――『鬼の花嫁』を最初から。

「お前だけを愛する。俺の花嫁」
キャー。

ついさっきまで
仕事の甘さを叱っていた人間と、
同一人物とは思えない。

今朝の来客がこんな私を見たら、
きっと腰を抜かすだろう。

それでいい。
厳しさも、未熟さも、晴れやかさも。
そして胸をときめかせる少女も。
全部、今日の私なのだから。