4時半。
拭き掃除まで、すべて終わった。
少し汗ばんでいる。
けれど、不思議なくらい
気持ちはすっきりしていた。
まだお部屋の中にいるのに、
心はもう、ここにはいないような気がする。
横浜と、向こうの街。
横浜で出逢った人たちと、
向こうで待っている人たち。
私は今、その二つの場所、
その人と人とのつながりの真ん中を、
行ったり来たりしている。
私の心は今、
いったいどこに佇んでいるのだろう。
床を磨きながら、私自身も磨いた。
七日間で重ねた色を抱きしめたまま、
白へ還った。
けれど、その白はもう以前の白ではない。
昨日までの私をすべて内包した、
濃く、深く、輝く白。
そんな白になった私は、
まだ横浜にいて、
もう横浜にはいない。
かといって、
まだ向こうの街にもいない。
二つの場所の「あわい」に佇み、
心だけが静かにうつろっている。
忘れ物はない。
お部屋もきれいになった。
またここへ戻ってくるとき、
新しい気持ちでこのドアを開けられる。
そう思うと、旅立ちは悲しくなかった。
むしろ、
次はどんな私になって戻ってくるのだろう。
そんな楽しみさえあった。
今日は久しぶりの、本当のオフ。
だからメイクもしない。
素顔のまま帰ろう。
気持ちに余白ができると、不思議なものだ。
自分のことだけではなく、
向こうで待っている人たちのことを思う。
帰ったら、一緒に朝マックへ行こう。
そんな小さなことまで、
今日はとても愛おしく思えた。
外へ出る。
風さんが見送りに来てくれた。
「風さん、七日間、終わったね」
そうだね。
「じゃあ今度は、一緒に帰ろう」
空には、
透き通るような群青の世界が広がっていた。
薄い雲まで群青をまとい、
あたり一面が深い青に包まれている。
その中に、ひとつだけ強く輝く星。
小さく魅えるのに、
その光だけは
私のところまで真っすぐ届いてくる。
もうすぐ夜が明ける。
やがて、この群青も白へ還っていく。
夜と朝のあわい。
横浜と向こうの街のあわい。
昨日までの私と、
これからの私のあわい。
私はその真ん中に佇み、
しばらく群青の世界を魅つめていた。
昨日で営業終了だったはずなのに、
若様だけは特別にもう一度、
心の中へ招き入れてしまった。
ほんの少しのつもりが、
気づけば2時を過ぎていた。
そして3時に起きた。
ほとんど眠っていない。
それなのに今、
眠さよりも、
この群青を魅ていられることを
心が喜んでいる。
空に浮かぶ雲の中へ、
七日間の記憶が
美しい映像になって浮かんでくるようだった。
胸の奥が、じんと熱くなった。
そして——シャッターが開いた。
エレベーターに乗る。
地下へ降りる。
その瞬間、
何かが動いたような気がした。
さっきまで私は、
二つの場所のあわいをうつろっていた。
けれど今、
進むべき方向へ一歩踏み出した。
ここから地下鉄に乗る。
乗り換えて、また乗る。
そして約2時間と少し。
私は横浜から向こうの街へ向かう。
この時間は、
きっと私にとっての心の渡り廊下なのだ。
一瞬で場所を変える扉ではない。
横浜で生きた私から、
向こうの街で今日を生きる私へ。
七日間の色を抱いたまま、
ゆっくり、ゆっくり渡っていく。
進むほどに横浜は遠ざかる。
けれど、横浜の私が消えていくわけではない。
その私も抱いたまま、
また別の私へと向かっていく。
群青は、やがて白へうつろう。
そして私もまた、
その空と一緒にうつろっていく。
さあ。新しい私になって、
今日という一日を歩き始めよう。
群青の
あわいを渡り
風連れて
白へ還りて
今日を歩まん
— Morimura
群青、白へうつろう✨
勃つねで応援-
-
共有で応援