予定通りの電車に乗り、
自分の場所をキープした。

場所はまったく違うのに、
なんだかお店の待合所で、
その日の自分の居場所を確保するときと
少し似ている。

背もたれに体を倒し、ふっとそこへ預ける。
この電車にさえ乗れば、予定通り帰れる。

七日間歩いてきた心の渡り廊下。
今はまだ、
その最後の部分を
渡っている途中なのだろう。
けれど、体はまだ電車の中にいるのに、
心はもうひと足先に向こうの町へ飛んでいた。

いつもなら、ここで朝ごはん。
でも今日は違う。
帰ったら、
そのまま家族と朝マックへ
行くことになっている。

だからコンビニで買ったゆで卵をひとつ。
コーヒーを飲んで、
小腹には少しだけ我慢してもらう。
この空腹さえ、
もう向こう側の楽しみにつながっている。

そして、
いつもならアイマスクをつけて
眠るところなのに、
今日はなぜか眠る気にならなかった。

空色の手帳を開く。
赤と黒のボールペンを持ち、
時折、修正テープを走らせながら
10月の予定をひとつずつ整えていった。
お店の予定も一度まとめ、
メールの下書きまで作った。

けれど、まだ会社の予定が少し動きそうだ。
それなら急いで外へ出すことはない。
もう少しだけ、自分の手元で肥やしておこう。

そんなことをしているうちに、
気づけば1時間が過ぎていた。

今から眠ろうか。

そう思ったけれど——。

いや。

ここはやっぱり、若様でしょう。

あと1時間ほど。
青い炎に包まれながら、
ときめきの世界へ行こう。

家へ帰れば、休みとはいっても、
きっとじっとしてはいられない。

ご飯の用意。
一人分ではない洗濯物。
また横浜へ向かうための旅支度。

季節も少しずつ進んできた。
そろそろ服も入れ替えなくてはいけない。
せっかくのオフなのだから、
この機会にやってしまおう。

……なんて考えていたら、
まだ家にも着いていないというのに、
私の頭の中では、
今日という一日がすっかり終わってしまった。

せっかくのお休みなのに。
まだ朝なのに。
なんだか、悲しい。

だから今は、
向こう側の一日を
先回りして生きるのをやめよう。

空色の手帳を閉じる。 

赤と黒のボールペンも置く。
心の渡り廊下を渡り切るまでの、あと少し。
誰のためでもなく、
何かを片づけるためでもなく、

ただ私がときめくためだけに使っていい時間。

青い炎の向こうで、
若様が待っている。

さあ。家へ帰る前に、
もうひとつだけ扉を開けよう。

心だけはまだ、
自由な旅の途中なのだから。

渡りゆく
心の先に
青き炎
朝の続きを
我がために燃ゆ

— Morimura