葉の先に
ひとつのしずくがいた
朝の光を抱いて
きらりと揺れていた
ただ
雨が残していった
小さな一粒
そのときの私は
きれいだね、
と見つめただけだった
少し歩いた
言葉を探した
ひとつの風景から
心は遠いところへ旅をした
小さな声に逢った
弾けるような笑顔に逢った
「できたよ」
そんな喜びを
全身で差し出してくれた
遠い日の光に逢った
あの頃の私は
誰かの喜びを
自分のことのように喜び
誰かの涙を見て
また涙した
忘れていたわけではない
ただ
ずっと心の奥で
眠っていただけ
今朝の光が
そっと起こしてくれた
そして私は
もう一度
あの中庭へ帰った
心の中で雨に濡れた緑
朝の光葉の先の
あの一粒
あ。
そうだったのね。
あれは
涙だった
悲しい涙ではない
苦しい涙でもない
遠い日の感動に
もう一度逢えたことが
うれしくて
今の私の心が流した
喜びの涙
けれど
あのしずくは
そんなことを知らない
自分が涙になることも
遠い記憶への扉になることも
何も知らずに
ただ
葉の先で
光っていただけ
だから私は
あの一粒を
名前もつけずに
心へ連れてきたのだろう
しずくは
涙を知らない
涙にしたのは
今朝の
私の心。
「しずくは、涙を知らない」
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