長い一日が終わろうとしている。

今日は、とても静かな一日だった。
一日じゅうモリリンにも頑張ってもらった。
元気に飛び跳ねたり、
笑ったり、ちょっとおどけたり。
けれど、
開いたドアは14時半からのひとつだけ。

そして17時を過ぎると――

しーーーーーん。

ここまで静かだと、
途中からはもう笑うしかなかった。

けれど、不思議なものだ。

時間に余白ができると、
いつもは後回しになっているものが
次々とこちらへやってくる。

次の横浜をめぐるプランを考えた。

知っているつもりだった街を
もう一度眺めてみると、
「あ、ここも面白そう」
「今度はこっちへ行ってみよう」
そんな小さな発見がいくつも出てきた。

森村探検隊も、
今日はなかなか忙しい。

そして、ふとしたところから
ゴディバ夫人のことまで思い出した。

ずっと知っていたこと、
昔どこかで触れたことが、
静かな時間の中で突然こちらを向く。

「ああ、そうだった」

そんな記憶との再会も、
今日の小さな寄り道だった。

さらに今日は、
睡眠貯金もたっぷりできた。

気づけば眠っていて、
目を覚ましたら22時。

こんなふうに思い切って眠ることも、
普段ならなかなかできない。

そして、
若様の群青の世界もゆっくり魅つめられた。
青い炎の向こうへ心を遊ばせ、
急ぐこともなく、
ただ好きな世界に身を置く。

次の横浜を考え、
知らないものを見つけ、
昔の記憶を拾い、
眠って、
群青の世界まで楽しんだ。

振り返ってみれば今日は、
何もなかった一日ではない。

むしろ、
いつもならできなかったことを
いくつもできた一日だった。

今日一日の物語は
最終章に入ろうとしている。

ドアは、ひとつしか開かなかった。

けれど、
そのぶん時間には大きな余白ができた。

そして私は、
その余白の中で
横浜を歩き、
記憶をたどり、
眠り、
好きな世界へも遊びに行った。

暇だった。

でも、いい一日だった。

そんな日があってもいい。

今日見つけたものを
心のポケットにそっとしまって、
静かな横浜の夜に灯りを消そう。

長歌

静けさの
降りたる午後に
扉ひとつ
開きてのちは
音もなく
時はゆるりと
ほどけゆき
知らぬ横浜
たずねれば
次なる道の
姿見え
遠き記憶に
逢ひながら
眠りを重ね
身を休め
群青の火を
魅つめつつ
できぬと思ひし
あれこれを
余白のなかに
ひとつずつ
拾ひ集めて
夜となる
静けき日こそ
豊かなりけり

反歌

扉ひとつ
静けき時の
そのなかに
できぬことまで
花ひらきたり

— Morimura