お店で部屋の鍵を受け取り、
いつもの道を部屋へ向かって歩いていた。
この道を歩くと、
どうしても思い出してしまう。
あの日の朝。
2時間12分の寝坊。
あれは、本当に焦った。
目を覚ました瞬間から、
頭の中は真っ白。
予定していた朝はすべて吹き飛び、
ただひたすら時間を取り戻そうと動いた。
結果的には、
予定より一本遅い電車に乗り、
駅にはわずか2分遅れで到着することができた。よく間に合ったものだと思う。
でも、その代わり——メイクも何もせず、
とにかくそのまま飛び出した。
本当なら、最後に部屋をきれいに掃除して、
荷物も全部まとめて、
「では、また」と気持ちよく
部屋を出るはずだったのに。
あの日の私は、
まるで近所へ
ちょっと買い物にでも行くような格好で、
荷物を残したまま帰ってしまった。
なんで、あのとき寝落ちしたんだろう。
考えてみれば、原因はなんとなくわかる。
電気を消して、
ごろんと横になりながら日記を書く。
これは、いけない。
暗い部屋で横になれば、
身体の方が先に、
「もう寝なさい」
「そのまま寝なさい」と誘ってくる。
これからの教訓。
日記を書くときは、電気を消さない。
そして、横にならない。
……でも。もしあの日、
横になった場所がベッドではなく
床の上だったら、
寝心地が悪くて、
もっと早く目が覚めていたのかもしれない。
そんな、
今さらどうにもならないことを
考えているうちに、
部屋へ着いた。
ドアを開ける。
「ただいま」
でも今日は、
いつもの「ただいま」と少し違う。
3日ぶりに戻ってきたというより、
ついさっきまで
ここにいたような空気が残っている。
きちんと片付けはしていたけれど、
荷物を置いたまま飛び出したからだろう。
あの朝の慌ただしさが、
まだ部屋のどこかに残っているようだった。
本当に、自業自得とはいえ大変な朝だった。
でも今になれば、
それももう少し懐かしい。
そして、荷物を置いたままだったおかげで、
今日の荷解きはわずか15分ほど。
これは——よかったのか。悪かったのか。
まあ、結果オーライということにしておこう。
さて。今日は18時から出勤します。
18時からご予約くださったあなた。
ありがとうございます。
お逢いできるのを、楽しみにしていました。
今日は待ち合わせですね。
では、あのホテルへ一緒に行きましょう。
どんな笑顔で現れてくださるのかな。
それを楽しみに、
森村もそろそろ夜の準備を始めます。
では、後ほど。
そして20時からご予約くださったあなた。
ありがとうございます。
本当にお久しぶり。
ご予約が入ったのを見たとき、
思わず嬉しくなりました。
また一緒に、
たくさんお話しして、
笑って、
ぱくぱく食べて。
そんな夜を過ごせることを
楽しみにしています。それでは、
お誘いをお待ちしております。
あの日、慌ただしく飛び出した部屋へ戻り、
今度はきちんと気持ちを整えて、
森村、今夜の扉を開きます。
— Morimura
帰室して、夜の扉ひらく✨
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