モリリン
「はいっ。引き続き、
こちら現場のモリリンです」
ヒカリン
「ヒカリンもいるでちゅ」
風さん
「僕もまだ一緒だよ」

さて。
かをりを後にした森村さん。
さっきまで花を見て、
レーズンサンドを思い出し、
ちょっと幸せそうな顔をしていたのですが――

突然。
歩き方が変わりました。
速い。
明らかに速い。
モリリン
「これは何か思いつきましたね」
ヒカリン
「顔が違うでちゅ」

そうなんです。
森村さん、
自分が行こうと思っている場所が見えた途端、
一直線。
信号待ちですら、
なんだか少し苛立っている。

モリリン
「早く青になれって顔してますね」
ヒカリン
「せっかちでちゅ」
風さん
「森村さん、
目的地が決まると寄り道しないもんね」

そう。
コンビニで新作サンドイッチを
買うと決めたら、
サンドイッチ売り場へ一直線。
欲しいものが決まった瞬間、
猪突猛進。
赤い布を見た牛のごとく――いや。
それはちょっと違うか。
でもまあ、突進型。

朝から空を魅て、
心の秋模様を描き、
静かな浪漫に浸っていたとしても、
この本質は、
しっかり心の奥に生きております。

ところで森村さん。
本当は今朝、
丸和の前も通ってみようと思っていたはず。
ところが。
家系ラーメンのことが頭に浮かんだ途端、
丸和、完全に消えました。

ヒカリン
「ヒレカツどこ行ったでちゅ?」
モリリン
「ラーメンに負けました」
そして森村さん、細い道へ。
また細い道へ。
飲食店がありそうなところを選んで
歩いております。

お。
ラーメン屋さん発見。

……と思ったら、つけ麺。
素通り。
その先には、とんかつ屋さん。
森村さん、一瞬見る。
でもまた進む。

モリリン
「ラーメンととんかつの間を
さまよっています」
ヒカリン
「食べものの淡いでちゅ」
風さん
「森村さん、
本当に食べ物の寄り道が好きだね」

さらに歩く。
今度は、超濃厚鶏白湯ラーメン専門店。
森村さん、また一瞬見る。でも――違う。
狙いは、家系。
そしてついに。
朝の道へ戻ってきた。

森村さん、ちょっと汗ばんでおります。
さっきまで、
「秋風が気持ちいい」なんて言っていたのに。
今はもう完全に、
家系ラーメン捜索隊。

そのとき。
信号が青になった。
森村さん、ぴたり。
そして、顔が変わった。
「あ、そうや」思い出したようです。

伊勢佐木モール。
あそこなら、
確か家系ラーメンの店があったはず。
しかも、朝早く通るときにも
こうこうと看板が光っていた。

森村さん、急に足取りが軽くなりました。
ヒカリン
「見つけた顔でちゅ」
モリリン
「完全に獲物を見つけました」
そして――ありました。
暗いモールの中で、
看板のまわりをぐるりと囲むライトが
ぴかぴかと点滅。

なかなか派手。
横浜家系ラーメン。
営業時間を見ると、通常は朝5時まで。
なるほど。
だから森村さんが
4時台、5時台に通ったときも、
いつも元気に光っていたわけです。

店の前で立ち止まる森村さん。
どうやら昨日のお客様から聞いた、
「家系には直系がある」という
話を思い出している模様。
本家から直系と認められた店には、
それらしい証明があるらしい。
森村さん、そっと覗く。
かなり覗く。

ヒカリン
「あるでちゅか?」……。
どうやら、ここは違うようです。
でも森村さん、そこで終わりません。

家系には直系があり、
その先にのれん分けがあり、
そこからさらに店が広がっていく。
チェーン店でも、
どこかから出来上がったスープが
運ばれてくるのではなく、
店ごとに寸胴鍋で豚骨を炊き、
一からスープを作る店も多いらしい。

モリリン
「そこにも浪漫を見つけましたね」
風さん
「今度は家系浪漫か」

そう。森村さん、
つい最近、
人生で初めて家系ラーメンを食べました。
意外とおいしかった。
でも昨日のお客様によると、
まだまだおいしい店がある。

それなら。
一度くらい、直系と言われる店の一杯を
食べてみたい。
森村さん、完全に心の中で
ラーメンをすすっております。

ヒカリン
「朝からでちゅか?」
朝からです。実際には何も食べていません。
でも、心の中では、
たぶんもう一杯完食しております。

さて。
ようやくゴールが近づいてきました。
今朝の森村さん、
群青の空を魅て、
月にうさぎを魅つけ、
秋の空に心を描き、
浪漫航路を漂い、
國創を考え、
最後は――家系ラーメン。

風さん
「森村さん、ほんと食いしん坊だね」
ヒカリン
「おなかいっぱいでちゅ」
モリリン
「ということで、
本日の実況中継はここまで!」

森村さんと愉快な仲間たち。
朝のウォーキング、これにて終了です。
実況はモリリン。
アシスタントは、
ヒカリンと風さんでした。

そして主役はもちろん――森村さん。
今日も朝から、
よく歩き、
よく魅て、
よく考え、
そして最後に、よく食べました。

……心の中で。
じゃんじゃん。

— Morimura