モリリン
「はいっ。こちら現場のモリリンです」
ヒカリン
「ヒカリンもいるでちゅ」
風さん
「僕もいるよ」
さて。
心のサンクチュアリー、
大さん橋を後にした森村さん。
さっきまで、空を魅て、
光を魅て、
心の浪漫航路を漂い、
ついには國創にまで
思いを巡らせていたわけですが――
大さん橋を出た途端、どうやら心は無事、
身体へ戻ってきた模様です。
そして、その感動がまだ冷めきらないうちに、
入口近くのベンチへすべり込むように座った。
スマホを取り出す。
打つ。
打つ。
打つ。
……速い。
ヒカリン
「何してるんでちゅ?」
モリリン
「たぶん、さっきまでの朝を
文字にしてるんじゃない?」
ちらっ。
どうやら、朝の三部作の序章を
まとめているようです。
なるほど。本編はお部屋に帰ってから、
ゆっくり三部続けて書くつもりらしい。
それにしても速い。
ついさっきまで空を見ながら、
「秋は心を描く季節」なんて
しっとりしていた人とは思えません。
サクサク。
サクサク。
そして――すくっ。
立ち上がった。
もう歩き始めました。
大さん橋からまっすぐ出たところの広場。
その前の歩道脇には、
かわいらしいプランター。
赤いサルビア。
ピンクと白のベゴニア。
朝の光の中、
歩道の端を小さく彩っている。
森村さん、ちらり。
そして、にこっ。
風さん
「やっぱり花には立ち止まるんだね」
ヒカリン
「かわいいでちゅ」
ところが。
数秒後。
森村さんの顔が、……曇った。
あれ?眉間に何かいる。
モリリン
「来ましたね」
ヒカリン
「何がでちゅ?」
モリリン
「イライラです」
どうやら、画像を整えるために開いたアプリ。
その瞬間――広告動画、開始。
しかも。
閉じられない。
飛ばせない。
見終わるまで、
先へ進めない。
ヒカリン
「ずっと見ないとダメなんでちゅか?」
はい。ダメなようです。
森村さん、歩きながらスマホを持ち、
じーっ。
………………まだ終わらない。
ちょっと顔が怖い。
風さん
「風、吹かせようか?」
モリリン
「いや、広告は飛びません」
……そしてようやく。
終了。
森村さん、途端に表情がゆるんだ。
また操作。
サクサク。
サクサク。
どうやら無事、朝の三部作・序章を
送り出した模様です。
ヒカリン
「よかったでちゅー」
モリリン
「森村さん、機嫌なおりました」
さて。
そのまま歩いていくと――横浜かをり。
あのオレンジ色のテント。
その上には、
葉っぱが少ししなだれかかっている。
森村さん、ぴたり。
昨日のお客様との話を
思い出したようです。
丸和のヒレカツ。
横浜のラーメン。
そして――かをりのレーズンサンド。
どうやら森村さん、
あれがかなりお気に入り。
厚みのあるクッキー生地。
あの食感がいいらしい。
以前もらったときは……
確か、全部いっぺんに食べました。
ヒカリン
「全部でちゅか?」
全部です。
しかも本人、
「六花亭を超えてるかも」くらいに
思っていた模様。
風さん
「また買うの?」
モリリン
「その気は満々でしょうね」
ただし。
森村さん、人間ドックの体重測定を
しっかり気にしております。
現在、本人いわく、
ダイエット中。
ヒカリン
「今朝ゆで卵食べてたでちゅ」
風さん
「昨日のチョコも食べてたよ」……。
この件については、
モリリン一同、
深く追及しないことにいたします。
さて。
かをりを後にした森村さん。
どうやら次に、何かを思いついたようです。
歩き方が変わりました。
さっきまでの、
空を見て、
花を見て、
心のままに寄り道する歩き方ではありません。
速い。
明らかに速い。
モリリン
「何か見つけに行く顔です」
ヒカリン
「どこ行くでちゅ?」
風さん
「昨日の話の続きを探しに行くんじゃない?」
森村さん、右へ。
左へ。
細い道へ。
そしてまた、足早に。
何かを探しています。で
も、本人以外、
何を探しているのかはまだ分かりません。
……いや。
もしかして。
昨日のお客様との話で、
もう一つ盛り上がっていたもの。
家系ラーメン?
モリリン
「……これは来ましたね」
ヒカリン
「何がでちゅ?」
モリリン
「食い気です」ということで。
実況中継、ここからいよいよ――
食い気編へ続きます。
— Morimura
モリリン&ヒカリン実況中継|イライラ地上編
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