眠りについたのは、
20時半ごろだったように思う。

日記をアップして、
アイマスクをつけたら――もう、
うんもすんもない。

こてん。
そのまま眠りの底へ落ちてしまった。

よっぽど眠たかったらしい。
いつもなら、
ほんの少しくらいは
群青の世界の扉を思い浮かべるのに、
今夜はその扉の在りかさえ、
考える余地がなかった。
かなり深く眠っていたところを、
お店からの電話で起こされた。

どうやら、お仕事が入ったみたい。

眠りの底から、
一気に現実へ。

そして私は、
今夜の最後のドアへ向かった。
ホテルの入り口まで、
あなたをお出迎え。
外へ出てこられたあなたのお姿を見つけて、
私もすぐに車から降りた。

笑顔がとても素敵で、
どこかやわらかく、
優しそうなあなた。

初めてお逢いしたその瞬間、
胸の中に、
ふっと温かな灯りが
ともったような気がした。

そして、お部屋へ。

二人でベッドに横並びに腰掛けながら、
お茶を飲んで、
まずは自己紹介のご挨拶。
するとあなたは、
私の頭をそっと撫でてくださった。

「すごくいい」
「かわいい」
そんなふうに、
何度も褒めてくださるものだから、
もう私は、
すっかり有頂天。

心の中では、
ふわり、ふわり。

秋の夜空へでも
舞い上がってしまいそうだった。

本当は、
あなたに
いっぱい感じていただけたらいいな
と思っていた。
あなたのぬくもりを感じながら、
あなたの優しさに包まれながら。

けれど気がつけば――もしかすると、
いっぱい感じていたのは、
私のほうだったのかもしれない。

秋の夜長。
時間までが、
ゆっくりとやわらかくほどけていくような、
とろけるような夜だった。
また、
あなたとこんな夜を迎えられたらいいな。
そんなことを思いながら、
「また待っていますね」
そう言って、部屋を出た。

ドアが閉じても、
すぐには夜は終わらない。
あなたと過ごした時間のぬくもりも、
あの、とろけるような思いも、
まだしばらく、
胸の中に残っていた。

秋深し
触れたぬくもり
胸に灯り
眠りの底へ
まだ帰れずに

— Morimura