大桟橋を出た森村さん。
さっきまで胸に手を当てて、
何やら遠い世界へ
旅をしていたようだけれど――
「ねえヒカリン、森村さん、
なんか少女みたいな顔してなかった?」
「うん。恋物語でも考えてたのかな」
ふふ。
そんな二人をよそに、
森村さんはすたすた歩き始めた。
まず立ち止まったのは「かをり」の前。
「やっぱり森村さん、
この“かをり”って文字好きそう」
「うん。“思う”より“おもふ”みたいな、
昔の言葉も好きだもんね」
どうやらモリリンとヒカリン、
だんだん森村さんの好みが
分かってきたらしい。
カー、カー、カー。
「もう、カラスうるさいなあ」
「森村さん、
せっかくいろんなこと考えてるのにね」
身体は少し疲れているはずなのに、
足だけはどんどん前へ進んでいく。
途中、森村さんはマップを確認。
大桟橋通り。
日本大通り。
港大通り。
関内大通り。
「ねえ、ちゃんと覚えた?」
「たぶん……」
「森村さん、しっかりしてるようで
方向音痴だからね」
ふふ。
そして、地下へ続く少し気になるお店を発見。
手打ち蕎麦と酒料理の店。
「ヒカリン、これ森村さん好きそうじゃない?」「うん。お蕎麦、日本酒、
隠れ家っぽい雰囲気。かなり危ないね」
「帰ってきたら、
心にグサッと刺さってたりして」
でも問題は――
「もう一回ここに来られるかな」
「それが一番心配」
さらに進むと、
今度は時計屋さんの前でぴたり。
シャッターには、
宇宙服を着て腕時計を見る人。
「面白い!」
「しかもここ、
本当に時計職人さんがいるお店みたいだよ」
「森村さん、
昼間だったら絶対通り過ぎてたね」
朝だから見つけられるもの。
シャッターが閉まっているから見えるもの。
そんな小さな発見を拾いながら――
「あっ」
「どうしたの?」
「馬車道!」
ようやく戻ってきた。
「でも途中の通り、
いくつかすっ飛ばした気がするね」
「まあいいよ。戻ってこられたんだから」
そうそう。
道を間違えても、
寄り道しても、
最後にはちゃんと戻ってくる。
それが森村探検隊。
そして次に森村さんが目指しているのは――
どうやら、
今朝ずっと気になっていたあの場所。
勝烈庵。
モリリンとヒカリン、顔を見合わせた。
「やっぱり行くんだ」
「行くね、これは」
森村探検隊、
次の扉へ向かいます。
— Morimura
森村探検隊実況中継・第一部|馬車道へ戻れ!
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