夜が朝へと移ろうとき、
群青の空に
三つの星が輝いていた。

誰が結んだわけでもないのに、
その光は一本の線となり、
やがて小さな世界を描き出す。

私はそっと、
その星のブランコに腰を掛けた。

ゆらり。
ゆらり。

揺れるたびに、
遠い記憶が近づいてくる。

数字に迷った少女がいた。
答えを求めて、
何度も線を引き直す少女がいた。
真っ黒になった答案用紙。
その中に、
たったひと筋の光を見つけた。

あの日、知った。

答えとは、
与えられるものではなく、
自分の手で導いていくものなのだと。

あれから、
どれほどの時が流れただろう。

数字を愛し、
言葉を愛し、
論理を重ね、
感性に心を遊ばせた。

けれど、いつも
どこかに居場所を探していた。

理系にもなりきれず、
文系にもなりきれず。

どちらの岸にも
たどり着けない私。

そう思っていた。

でも、違ったのね。

私は、どこにも着地できなかったのではない。
ふたつの世界が出逢う場所を、
ずっと歩いていたのだ。

デジタルとアナログ。

数字と言葉。

論理と感性。

そのあわいには、
どちらか一方の色では描けない
私だけの風景があった。

ああ、
なんて美しい場所なのだろう。

ふと見上げた群青鏡には、
羽ばたこうとする私の心。

幾重にも重なる
ピンクの炎が、
朝の空を染めていく。

そして水鏡には、
長い時を旅してきた
数えきれないほどの記憶。

過ぎ去った昨日も、
まだ訪れぬ明日も、
その水面にそっと重なっている。

空は心の深さを映し、
水は時の深さを映す。

そのふたつの鏡のあわいに、
今を生きる私がいる。

やがて、
ピンクの雲海の向こうから
まん丸い太陽が顔を出した。

ああ、光。

なんて温かいのだろう。

あの少女が見つけた
数直線の先の小さな光が、
今、こんなにも大きくなって
私を包んでくれている。

風よ。

これからも、
私の前を吹き抜けておくれ。

時には強く、
時には優しく。

立ち止まる日があってもいい。

風を避ける日があってもいい。

そのたびに考え、
そのたびに感じ、
また自分の足で歩き始めよう。

心の赴くままに。

けれど、
心に迷わされることなく。

そして今、
海の向こうへ目を向ける。

朝陽が水面に描いた
一本の光の道。

あの光の向こうには、
まだ誰も知らない国がある。

私が思い描き、
私の心で育て、
私自身の言葉で創り上げていく国。

そこにはきっと、
数字も言葉も、
夢も記憶も、
すべてが美しく響き合っている。

そう。

私の國創。

いつか、
あの光の向こうへ。

でも、急がなくていい。

遠い未来を夢見る私も、
今この瞬間を生きる私も、
どちらも大切なのだから。

群青の星は、
もう朝の光に溶けてしまった。

けれど、
私の胸には今も
三つの星が輝いている。

ゆらり。
ゆらり。

星のブランコが、
もう一度、小さく揺れた。

そして私は、
ようやく気づいた。

私が探し続けていた居場所は、
どこか遠くにあるのではなかった。

ずっと私の中にあった、
この美しいあわいだったのだ。

さあ、歩こう。

私のままで。

私だけの光を胸に。

新しい朝へ。

そして、
いつかちゃんへ続く道へ。

— Morimura