酔芙蓉が、朝の白から、淡い桃色へ、
そして夕暮れの濃い紅へと
染まっていくように――

七夕の朝、私の心も、
まだ見ぬ一日の色を待っていた。
目が覚めたら、3:05だった。

そのまま起きておこうかとも思ったけれど、
「起きるのは、4:00でいいや!」と、
もう一度まぶたを閉じた。
次に目覚めたのは、4:40。
二度寝どころか、
どうやら三度寝をしてしまったみたい。
たまにはいいか。
余分に眠れたのだから、
きっと身体が欲していたのだろう。

そんなふうに自分を納得させながら、
歩きはじめた。
時間が少し違うだけで、街の表情は変わる。
けれど、今朝はいきなり、
あまり見たくない光景に出会ってしまった。
伊勢佐木モールの小さな横断歩道。

生ゴミが散乱し、それを漁るカラスの大群。
30羽ぐらいはいただろうか。
車が通ろうとしても、
まるで動く気配がない。
車は立ち往生。
人が横断歩道を渡ろうとして、
ようやく一斉に飛び去った。
なかなか、しぶとい。

その光景をあとにして、
港の方へ向かう坂道を歩いていると、
海の方から、ふわりと風が吹いてきた。
空を見上げる。
今日も太陽は見えそうにない曇り空。
けれど、今日は別の意味で空が気になる。
七夕だから。

織姫と彦星は、
年に一度の逢瀬を叶えることが
できるのだろうか。
そんなことを思いながら、
しばらく空を魅つめて歩いていた。

「咲いて儚い酔芙蓉
しのび逢う恋 風の盆」
年に一度の逢瀬と聞くと、
私はいつも髙橋治さんの小説
『風の盆恋歌』を思い出す。

普段は別々に暮らしながらも、
風の盆の三日間だけ逢うことを許される、
切なくも激しい愛。
朝に咲いて、夜にはしぼんでしまう
酔芙蓉の儚い美しさとともに
描かれるその世界は、
七夕のイメージとどこか重なる。

私にとって七夕は、
ただ短冊に願いを書く日ではない。
一年に一度だけ許される想い。
逢いたくても逢えない時間を越えて、
ようやく触れ合う恋。
そんな、少しドラマチックで、
切なく美しい日。

7月7日、火曜日。
酔芙蓉の花が開く。
朝は、まだ何色にも染められていない純白。
やがて、ほんのり淡いピンクに染まり、
夕暮れには、濃い紅へとその表情を変えていく。

私の一日も、いま静かに花開く。
まだ何色にも染まっていない朝。
この心も、この身体も、この時間も――
貴方に、美しい色に染めてもらいたい。