まっすぐゴールを目指してしまうと、
10kmには届かない。
別に、必ず10kmを
超えなければならないわけではない。
けれど、あと少しで届くのなら、
その一線を越えて、
小さな達成感を味わいたい。

そう思い、遠回りと寄り道をすることにした。
歩数計を確認しながら、少し遠回りをする。
また歩数計を確認し、
今度はコンビニへ寄り道する。
コンビニの店内を
あてもなくうろうろするだけでも、
歩数は少しずつ増えていく。

そんな遠回りと寄り道を
繰り返しているうちに、
自宅の近くでありながら、
これまで一度も通ったことのない細い路地や、
見たことのない店、
新しくできたらしいお店を見つけた。

そして何より嬉しかったのは、
普段はあまり行かない、
少し離れたコンビニで、
梅味の柿ピーを見つけたことだった。
これは私の好物ではなく、
家族が好きなお菓子だ。

いつも家族が買ってきてくれるお菓子を、
私がほとんど食べてしまう。
だから今日は、
そのお詫びのつもりで
家族に買って帰ることにした。
きっと喜んでくれるのではないかと思う。

遠回りの先に見つけたのは、
特別な景色でも、
大きな幸運でもなかった。
けれど、
家族の笑顔を思い浮かべながら選んだ、
小さな梅味の柿ピー。
これもまた、
今日の私が見つけた
セレンディピティなのかもしれない。

今日は朝そばの時間がない。
その分、
いつもより10分ほど早くゴールへ着いた。
歩き始める時刻も、
歩き終わる時刻も、
歩いている時間も、
歩数も距離も、
ほとんど横浜ウォーキングと変わらない。

場所は違っても、
同じペースで一日が始まっていく。
それが、なんだか楽しかった。

今は、クールダウンのストレッチをしている。
ビルと建物の間を、
心地よい風が勢いよく吹き抜けていく。
朝の歩き始めに感じた風よりも、
少し強くなっている。

たっぷりとかいた汗で、
べたべたになった体を風が包み込み、
少しずつ、さらさらと乾かしていく。
ストレッチを終え、顔を上げる。
ここからはドン・キホーテの看板は見えない。

けれど、朝の空はキラキラと輝き、
思わず魅つめていたくなるほど美しい。
静かに聞こえているセミの鳴き声も、
これから訪れる日中の暑さを、
少しずつ予告しているようだった。

横浜にいるなら、
ここから私の「極楽オアシス時間」が始まる。
けれど、自宅にいる今日は、
そういうわけにはいかない。
お風呂から上がったら、
休憩する間もなく、
家族の朝ごはんの支度に
取りかからなければならない。

今日のメニューは、すでに決まっている。
下ごしらえも昨日のうちに済ませてある。
昨日のハマグリのおすましは、
少し味が薄かった。
今日は出汁と味を少し整えて、
ワカメを加えてみようか。
でも、おすましなのだから、
あまり野菜をあれこれ
入れすぎないほうがいいかもしれない。
そんなことを考えながら、
今日の食卓を頭の中に描いていく。

本来なら、今日は横浜へ旅立つ日だった。
けれど、急遽舞い込んできた、
嬉しい大きな案件。
その見積もりを作成するために、
横浜へ向かうのを一日遅らせることにした。

今日は会社へ行っても、
一日中、見積もり作成に取りかかる予定だ。
いつも慌ただしく動いているのだから、
今日は少しゆっくり出勤すると
会社にも伝えてある。

だから今朝は、
家族との朝の時間をのんびりと過ごそう。
遠回りをしたからこそ見つけられた景色と、
小さなお土産を持って帰り、
朝ごはんを囲みながら、
心と体をしっかり充電する。

そして今日は、
少しラフな服装で会社へ向かおう。
遠回りも、
寄り道も、
予定の変更も、それでいい。
まっすぐ進まなかったからこそ
見つけられるものがある。

今日という一日はもう、
そんな小さな発見と優しい風に包まれながら、
次の物語へと歩き始めている。