11:30になったので、
そろそろカレイの西京焼きを焼こうと、
コンベクションオーブンに入れて
ダイヤルを回した。
ちょうど12:00少し前には、
こんがりと美しく
焼き上がるのではないだろうか。
その間に手帳を開き、
これから乗る電車の時刻や、
今日の予定、
そして今週のスケジュールを確認していた。
ところが、そんなことをしているうちに、
突然電話が鳴り始めた。
会社からメールが届いたかと思えば、
また電話が鳴る。
折り返しの連絡が欲しいという内容も多く、
今のうちに、すべて済ませておかなければ。
そう思い、片っ端から電話をかけていった。
相手が変わるたびに、
案件の内容も用件もまるで違う。
そのたびに頭の中を
切り替えながら話していると、
だんだん何が何だかわからなくなってきた。
最後の電話を切った瞬間、
思わず、「ああ、もう頭が疲れる」と
口にしてしまった。
それを聞いていた家族から、
「ゆっくりやればいいのに。
自分で勝手に
頭をフル回転させているだけじゃないの?」
と言われてしまった。
「確かに、おっしゃる通り」
私も素直に答えた。
横浜モードへ切り替えたあとは、
こちらに残した仕事に煩わされたくない。
そんな気持ちがあるから、
つい家を出る前に、
できることをすべて
片づけておこうとしてしまうのだ。
だって、横浜へ行ったら、
こちらにいるときとは少し違う、
のびのびとした私で過ごしたいから。
11:50頃、そろそろ西京焼きが
焼けたかしらと思い、
焼き加減を確かめに行った。
ところが、魚は冷たいままだった。
どうしたのだろうと確かめてみると、
なんとコンセントが抜けたままになっていた。
そうだった。
先日、電子レンジが壊れ、
古いものと新しいものを入れ替えた。
そのとき、
家族がコンセントを抜いたのだろう。
すっかり忘れていた。
だから、西京焼きは今からスタート。
焼き上がるまでは、
もう少し時間がかかりそうだ。
その間にそばを茹でておこう。
そばの出汁は、すでに作ってある。
味見をしてみると、
なかなかいい味に仕上がっていた。
私、そばの出汁を作るのも意外と得意なの。
だって、そばが好きだから。
時間に余裕があるはずなのに、
私は相変わらず、
あちらへ行ったり、
こちらへ戻ったりと、
ばたばた動き回っている。
そんな私を見て、家族が、
「朝ごはんから帰ってきてから、
ずっと動いているんじゃない?
少し落ち着いたら?」と言った。
確かに、おっしゃる通り。
まさしく、貧乏暇なしなのだろうか。
それとも、早くあなたに逢いに
横浜へ行きたくて、
そわそわしているのだろうか。
あるいは、自宅や家族を離れる名残惜しさを、
立ち止まって深く感じてしまうのが
嫌なのかもしれない。
理由は、自分でもよくわからない。
ただ私は、
いつも動いていることが好きなのだ。
朝には厚い雲に覆われていた空も、
いつの間にか、その雲を払いのけていた。
見上げれば、
鮮やかな青空が大きく広がっている。
そこには、絵に描いたような綿菓子の雲が、
ぽつり、ぽつりと浮かんでいた。
雲というバリケードを失った太陽は、
じりじりと光を注ぎ始めている。
それでも、昨日までの
厳しい暑さとは少し違う。
日差しの中には、
どこか柔らかさが残っていた。
そこへ風が流れてきた。
「そろそろ、出発の時間になるわよ」
そう語りかけているようだった。
「忘れ物がないか、しっかり確認して。
いつものあなたらしく、
颯爽と旅立ちましょう。
私も一緒についていくから」
風が、そんなふうに
言ってくれているような気がした。
風とともにいると、心が弾む。
胸がわくわくして、
これから始まる時間が楽しみになる。
そして、柔らかく包み込まれながら、
大丈夫。
私は守られている。
そう思えることが、たまらなく嬉しかった。
風に急かされ、横浜へ✨
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