馬車道のベンチに腰を下ろし、
ほっとひと息ついた。
少しお腹が落ち着いたところで、
再び立ち上がる。
先ほどまで隣に座っていた風たちも連れて、
大岡川に架かる橋を目指し、
真っすぐに歩き始めた。
交差する左右の道から、
次々と新しい風が舞い込んでくる。
一つの風が私を包み、
また一つの風が加わる。
そして、
私が海から連れてきた風たちと一緒になり、
私の周りをくるくると楽しそうに舞っていた。
今日は、いつにも増して
風と縁のある朝らしい。
朝からずっと聴いていた曲は、
『風が私を呼んでいる』。
だからだろうか。
風が私を呼んでいる。
風が私に微笑んでいる。
風が私を包んでいる。
そして、風がまた新しい風を呼んでいる。
気づけば私は、
数え切れないほどの風に包まれていた。
大岡川の水面も、その風に揺れている。
細かな波の上へ朝の光が差し込み、
あちらこちらでキラキラと輝いていた。
この風は、光に満ちた世界へ、
今日一日の私を導いてくれるのだろうか。
橋の名前を確かめると、
「都橋」と書かれていた。
昨日は、ここから
ランドマークタワーの方を魅つめた。
今朝は反対側に立ち、
日の出町の方角を眺めている。
右手には、飲食店が連なる
細長い二階建ての建物。
左手には、ホテルや飲食店
が軒を連ねる街並みが広がっている。
このまま真っすぐ進めば、
以前SUPを楽しんだクラブがある。
川の向こうから吹いてきた風が、
私のもとへやってきた。
その風と一緒に、
何度も見てきたはずの街並みを魅つめる。
けれど、今朝はいつもとは少し違って見えた。
水面は光り、
木々は揺れ、
街の隙間を風が駆け抜けていく。
なんて爽やかな朝の風景なのだろう。
なんて気持ちのよい、
朝の新しい景色なのだろう。
風が私を呼んでいる。
鳥が私を呼んでいる。
雲が私を呼んでいる。
木々が私を呼んでいる。
そして、風が風を呼んでいる。
幾つもの風が重なり合い、
やがて私の心の中にも、
今日一日を前向きに進んでいくための
風が舞い始めた。
そして、ようやく
今日のゴールへたどり着いた。
ゆっくりとクールダウンをしながら、
今日も10 kmを超えて歩けたことへの
小さな達成感を、
しみじみと噛みしめる。
振り返れば、
今朝は歩き始めたときから、
ずっと風がそばにいてくれた。
海まで一緒に歩き、
光の中で舞い、
ベンチでひと休みをし、
再び私の隣を歩いてくれた。
そんな風との時間を思い返すと、
胸の中が嬉しい思い出でいっぱいになった。
「今日一日も、お願いね」
心の中で、そっと風に語りかけた。
それでは、今からお風呂に入り、
汗と疲れを洗い流そう。
風とともに歩き切った心と体を
ゆっくりとほどきながら、
私だけのオアシス時間を始めたいと思う。
風が風をよぶ朝✨
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