13:30になったので、家を出た。

家族は、「行ってらっしゃい」と
送り出してくれた。
けれど、その表情はなぜだか少し硬く、
どこか冷たかった。
やっぱり、そうよね。
朝、帰ってきたと思ったら、
半日も経たないうちに、
また旅立っていくのだから。

面白くない気持ちも、きっとあるのだろう。
そう思いながらも、
でも、仕事なんだから仕方がない。
家族のご機嫌ばかり気にしていても、
前には進めない。
そんな思いを頭の中で振り払い、
私は颯爽と家を出た。

外へ出た瞬間、
容赦のない暑さが身体を包んだ。
暑い。本当に暑い。

けれど――風が吹いてきた。
また、私の風が吹いてきた。
どこからともなく、ひとつ、またひとつ。
まるで私が出てくるのを
待っていたかのように、
風が私の方へ集まってくる。
そう。今日も一緒に行こう。
風とともに、一泊の旅へ。

朝、帰ってきたばかりの駅へ、
私はまた向かっていた。
朝は「ただいま」のために降りた駅。
今度は「行ってきます」のために乗る駅。
同じ駅と家との間を、
たった半日のうちに往復している。
なんて慌ただしいのだろう。

そう思う一方で、
まあ、これも私らしいか。とも思った。
忙しいのが嫌いなわけではない。
むしろ、
次から次へと予定が続いている方が、
私らしくいられるような気さえする。

やる気は、ある。
気持ちは、ちゃんと前を向いている。
ただ――最近は、
少しだけ身体の方が追いついて
きていないような気もする。

そんな私を見透かしたように、
また風が吹く。
いつも風が、元気をくれる。
いつも風が、私を引っ張ってくれる。
いつも風が、背中を押してくれる。
そして時には、
「大丈夫。まだ飛べるよ」
とでもいうように、
私の身体をふわりと持ち上げてくれる。

だから私は、どこへでも行ける。
軽やかに。
弾むように。
気分よく。
そして、前を向いて。

駅へ着くと、構内は
相変わらずのものすごい人だった。
朝、ここへ帰ってきた時よりも、
ずっと多い。
ただでさえ暑いのに、
人いきれまで重なって、
さらに暑い。暑い。暑い。
本当に、暑い。

そんな思いを抱えながらも、
私はホームへ向かう。
そして今度は、風とともに旅立つ。
いつも私のそばにいる、私の風とともに。

さあ、西の方へ。
また新しい物語の続きを探しに行こう。