風さんと一緒に待機所へ戻り、
まずはメイク直し。
そして、今日最後の夜ご飯、
おにぎりをひとつ食べた。
それからスケジュール帳を整理したり、
オキニトークをしたりしていると、
ほどなくしてメールの着信があった。
あ、お仕事が入ったみたい。

おっ、ちょうどグッドタイミング。
終わる時間から逆算すると、
お仕事が終わったら、
すぐに帰り支度をしなければならない。
だったら、今のうちにやっておこう。
先に荷物をまとめ、
最後にお店へ寄ったら、
そのまますぐ帰れるように
段取りを整えてから、ホテルへと向かった。

外へ出ると、風がすごく気持ちいい。
「あともうひと踏ん張り。頑張るわ」
風さんにそう話しかけながら歩いた。

そして――今日、最後のドアが開きました。
そこには、
ずっと逢いたいと思っていたあなた。
久しぶりに逢えたあなたが、
いつもの笑顔で迎えてくださいました。

あなたは私の顔を見るなり、
「かわいい、かわいい」そう言いながら、
頬を撫で、頭を優しく撫でてくれる。
年下のあなたにそんなふうにされるのは、
なんだかちょっと変な感じもするけれど……。

でもね。
私、「かわいい」って言われるの、
好きなのよね。
だからあなたに「かわいい、かわいい」って
言われると、思わずトロトロっと、
とろけてしまいそうになる。

でも、私だってあなたのこと、
かわいいと思っているのよ。
だって年下だし、
何より、その笑顔がかわいいんだもの。

今日も二人でずっとくっついて、
いっぱい抱きしめ合った。
あなたに触れて、
あなたに触れられて、
また私からあなたに触れて。
二人でたくさんのぬくもりを感じ合った、
素敵な夜になった。

そして最後は、二人で熱いお風呂へ。
湯気に包まれながら、
あなたと過ごす真夏の夜の、
熱くて優しいひとときを心に刻んだ。

そして、今日最後のドアが閉まりました。
ホテルを出ると、街はもう静かだった。
長かった一日の仕事を終えた安堵感から、
ふっと肩の力が抜ける。

ゆっくりと大通り公園を歩き、
途中のベンチにちょこんと腰を下ろした。
あなたとのひとときを思い出しながら、
日記を書き始める。

すると――。
なんだか私の周りを、
うろうろしている男性がいる。
気配を感じて振り向くと、
どうやらまたナンパらしい。
今日、二回目。
なぜだか今日は、ナンパの多い一日だった。

「どこかのお店にいるの?」
「どこのお店?」なんて聞かれたけれど、
今の私は日記で忙しい。
「私、忙しいから」そう言って、
手で振り払うように合図をすると、
男性は去っていった。

今はPRなんてしている余裕はないの。
とにかく、日記の続きを書かなくちゃ。
そう思って、再びスマホに目を落とした、

そのときだった。ふわり。
風がやってきた。
私は日記を書く手を止め、
ベンチから立ち上がった。
そして、風を迎えた。

もしかして風さん、
私の一日の終わりに、
「お疲れさん」って言いに来てくれたの?
それとも、
「もう終わったんだから、
一緒にお部屋へ帰ろう」って、
迎えに来てくれたのかしら。
どちらでもいい。
とにかく今は、
風さんが来てくれたことが嬉しい。

朝、風とともに歩き始めた長い長い一日。
新しい出逢いがあり、
嬉しい再会があり、
たくさん笑って、
たくさんときめいて。

そして今、こうして無事に
一日の仕事を終えることができた。
そのことが、たまらなく嬉しい。

空を見上げて、両手を高く伸ばす。
風さんを、この手でつかまえるように。
でもきっと風は、つかまえるものではなくて、
いつだって私の周りを自由に舞いながら、
そっと寄り添ってくれるものなのだろう。

だから今夜は、もう追いかけない。
一緒に帰ろう。今日も一日、
私のそばにいてくれてありがとう。
風さん、ありがとう。