引き続きご予約をいただいていたのだけれど、
次のお約束までは20分ほど時間があった。

とりあえず日記をアップして、
それから、
おにぎりを取りに待機所へ戻った。
お腹も空いていたし、
あまり遅い時間に食べると、
朝、胃がもたれてしまう。
だったら今のうちに
食べておいたほうがいいかな、と思ったのだ。

ところが、日記をアップして、
おにぎりを手にした頃には、
もう約束の時間まであと5分ほど。
仕方がない。
歩きながら食べて行こう。

そう思って外へ出ると、
待っていてくれた風さんたちと一緒に、
大通り公園を歩いた。
おにぎりを食べながら。

風さんは、そんな私を見て、
「相変わらずね」とでも言いたげに、
少し呆れたような顔で笑っている。
金目鯛の炊き込みご飯のおにぎり。
これが、とっても美味しかった。
歩きながらだったけれど、
ちゃんと味わって、お腹も満たされた。

さあ、あなたの待つお部屋へ向かおう。
「風さん、じゃあ、行ってくるわね」
そう声をかけると、
「お口にご飯粒、つけてない?」なんて、
からかわれたような気がした。
もう。
ついてないわよ。
そんなことを心の中で返しながら、
あなたのもとへ向かった。

そして、次のドアが開きました。
時間的には、もしかすると、
これが今日最後のドアになるのかもしれない。
そんなことを、ふと思いながら。

ドアの向こうでは、
優しい笑顔が素敵なあなたが
迎えてくださった。
とても親しみやすくて、
明るくて、
お話のリズムも心地いい。

初めてお逢いするはずなのに、
不思議なくらい緊張しなかった。
お話をしているうちに、
私の心が少しずつ、
柔らかくほどけていく。

あなたはいろんなことを話してくださった。
その言葉のひとつひとつを聞いていると、
言葉だけではない、
その奥にあるあなたの思いまで
伝わってくるような気がした。

ああ、なんだかわかる。
あなたのお気持ちが、
私にはとてもよくわかるような気がする。
そう思えた瞬間からだろうか。
さっきまで
初めて逢ったばかりだったはずなのに、
あなたとの距離が、
急に近くなったように感じた。

そして、二人でベッドへ。
あなたは、「いっぱい甘えてほしい」と
おっしゃった。
だから私も、
今日はいっぱい甘えようと思っていた。

けれど、あなたのお顔を魅つめ、
あなたのお話を聞いているうちに、
不思議と気持ちが変わっていった。
甘えるよりも、
あなたを優しく包んであげたい。
そんな気持ちになっていた。

だから、あなたに触れた。
優しく。
優しく。
やんわりと。
私の顔をじっと魅つめてくださる
あなたの目が、
なんだかとても心地よかった。

そして今度は、
あなたが私に触れてくださった。
やっぱり優しく、優しく。
私のことを
とても気遣ってくださっているのが
伝わってきて、それが嬉しかった。

あなたの腕に抱かれながら、温もりを感じた。
優しさを感じた。
そして何より、
あなたのお人柄を感じた。
今日、あなたに出逢えたことが、
ただただ嬉しかった。

すれ違っていくたくさんの時間の中で、
偶然にもあなたが私を見つけてくださった。
そして逢ってみれば、
不思議なくらい気が合って、
話が合って、
心まで近く感じられた。

こんな奇跡みたいな出逢いって、
本当にあるものなのね。
またお逢いできることを、
楽しみにしています。

あなたと出逢えたことへの
感謝と喜びを胸いっぱいに抱きながら、
お別れした。
外へ出ると、風さんが待っていた。
私はいつもの場所に座った。

さっきまでの
あなたとの時間を思い出しながら、
まだ身体のどこかに残っているような、
あなたの温もりの余韻を感じながら、
今、こうして日記を書いている。

すると、私の風が、
ふわり、ふわりとやってきた。
髪を撫でる。
頬を撫でる。
そして私の頭の上を、楽しそうに、
優雅に舞っている。

その姿はまるで、
「素敵な人に出逢えて、よかったね」
そう言いながら、
私とあなたの出逢いを
祝福してくれているように見えた。
嬉しかった。

風さんも、今の私の気持ちを
わかってくれているのね。
私はしばらく、その風に身を任せていた。

そして、そっと立ち上がる。
「じゃあ、風さん。そろそろ帰ろうか」

待機所に戻れば、残りはあと40分ほど。
帰り支度をしていたら、
きっとすぐに過ぎてしまう。

今日という一日の終わりが、
少しずつ近づいている。
けれど今はまだ、
この温かな余韻の中にいたい。
あなたと出逢えた喜びを胸に抱き、
その喜びを祝うように舞う風とともに、
私はゆっくりと、待機所へ戻っていった。