3:30、一度目が覚めた。
トイレに行きたかったからなのかもしれない。

でも、目を覚ます直前まで、
私は不思議な夢の中にいた。

病院の集中治療室だった。
母が亡くなったと思い込み、
「どうして知らせてくれなかったんですか」
私は病院のスタッフに、
感情をぶつけるように問いかけていた。

すると、別の方が言った。
「いえいえ、お母様は
まだ亡くなっていらっしゃいませんよ。
あちらにいらっしゃいますよ」
その言葉を聞いて、
私は教えられたベッドへ走った。

そこには母がいた。
看護師さんと、楽しそうに話をしていた。
顔は、間違いなく母だった。
でも、その身体は驚くほど小さかった。
まるで三歳くらいの子どものように。

こんなに小さくなって。
こんなに痩せて。
「お母さん」声をかけると、
母がこちらを向いた。
「来てくれたのね」

その瞬間、胸の奥から何かが込み上げた。
私は泣きながら母を抱きしめた。
腕の中の母は、
本当に、本当に小さかった。
——そこで目が覚めた。

3:30。
もう一度眠り、
予定どおり4:30に起きた。
テレビをつける。
平日の朝だから、いつもの番組をやっている。
そういえば、お母さん、
この番組が好きだったな。

そう思った瞬間だった。
夢を見ていたことを思い出した。
どんな夢だったっけ。
記憶の糸をゆっくり手繰っていくと、
小さな母の姿が戻ってきた。

母が亡くなったのは、
二年半ほど前。
そして昨日は、送り火だった。
ちゃんと見送ったつもりだった。
彼岸へ戻っていく母を、
心の中で見送ったはずだった。

それでも、
どこかに余韻を残していたのだろうか。
お母さん、会いたいな。
お母さん。
家族のこと、相談したいな。

亡くなってから親のありがたみがわかる、
とよく言う。
今朝は、その言葉が少しだけ胸に痛かった。

4:56。
慌てることなく支度を終え、歩き始めた。

最近、朝の風が涼しい。
伊勢佐木モールの向こうから、
すーっと私の方へ抜けてくる風が、
まるで顔を洗ってくれているみたいだった。
もしかしたら——。
風さんがお母さんだったりして。
なんてね。

そんなことを考えながら歩いていると、
道端では酔っ払いがだらしなく眠っていた。
思わず現実に引き戻される。

夢と彼岸と母の記憶から、いつもの朝へ。

でも、それでいい。
今の私には風さんがいる。
家へ帰れば、家族もいる。
だから今日も、まっすぐ前を向いて歩こう。
夢の中で抱きしめた小さな母のぬくもりを、
胸のどこかに残したまま。

そして今朝もまた、見つけよう。
朝一番の景色を。
風の香りを。
心がふっと動いた瞬間を。

今日という一日の物語は、
もう始まっている。

送り火の翌朝。
母を見送ったはずの私の頬を、
いつもの風が、そっと撫でていった。