「私のこの思い、うまく言葉に乗ったわ、
風さん」馬車道のベンチで日記を書き終え、
私は風さんに語りかけた。
「だから、
この言葉を風に乗せて運んでちょうだい。
誰かの心を明るくして、
何かを感じてもらえたら嬉しい。
そして、その人の心に残った思いも、
大切にしてもらえたらいいな」
そうして、すっとベンチを立った。
歩くのは、朝歩いてきた道を折り返す同じ道。
けれど不思議だった。
歩き始めた私と、今ここを歩いている私は、
同じ私なのに心の色がまるで違う。
鮮やかな色。
澄んだ色。
落ち着いた深い色。
朝から拾ってきた色とりどりの風景が
心に重なり、
その上には海で見た宝石のような
光の粒が散りばめられている。
私の心、今、輝いている。
そう思ったとき、
「心が磨かれる」という言葉の意味を、
少しだけ実感できたような気がした。
そして私の場合、
ただ感じるだけではなく、
その思いを言葉に乗せることで、
心はもう一度磨かれていくのかもしれない。
見たものを感じる。
心に響かせる。
心の奥にしまう。
そして、その思いを言葉に乗せる。
そうすることで、
感動はさらに深く心へ刻まれていく。
だからなのだろうか。
何かを見たり、
音を聞いたり、
懐かしい香りや色に出逢ったりすると、
ずっと前に心の奥へしまったものが、
すうっと自然に浮かび上がってくる。
まるで、今、目の前で起きているかのように。
そう考えると、
心に響く瞬間は、一瞬ではない。
その瞬間そのものは過ぎ去っても、
心に響いたものまで消えるわけではない。
心の奥に静かに佇みながら、
私がまた何かに心を震わせる瞬間を、
両手を広げて待っている。
そして新しい感動に出逢ったとき、
昔の感動も一緒に目を覚ます。
だから私の行く先には、まだまだ感動がある。
その先にも。
さらに、その向こうにも。
まるで「感動」という名の広い空が、
果てしなく続いているように。
伊勢佐木モールへ入った。
建物と建物の間から、もう一度空を見上げる。
朝より少し明るくなった空は、
一面、澄み切った空色だった。
ああ、私の手帳と同じ色。
その瞬間、
空と、
空色の手帳と、
私の心が重なった。
この果てしなく広い空のような心に、
私はこれからも一つ、
また一つと、
心に響いた風景を拾い、
色をつけていくのだろう。
そして、その思いを言葉に乗せていく。
一日一日の物語を紡ぎながら。
その一日一日の積み重ねが、
いつしか私だけの「心の物語」になっていく。
朝、ここから歩き始めた私と、
同じ道を戻ってきた今の私は、
同じ私であって、もう同じ私ではない。
今日拾った色がある。
今日出逢った光がある。
今日心に刻んだ言葉がある。
そしてまた明日、新しい色が重なっていく。
心に響いた瞬間は、
心の奥で静かに生き続ける。
私の物語とともに。
それは、決して消えることはない。
心に響く瞬間は、一瞬ではない✨
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