部屋へ戻ってきた。
出勤まで、まだ1時間ある。
せっかく手に入れた余白。
少しテレワークをしようとメールを開くと、
ちょっと嬉しい返信が届いていた。
先日発見したのに、うっかり忘れ、
その「忘れていたこと」さえ忘れ、
一週間後にようやく思い出した案件。
その報告書を、
うっかりしていたことには触れず、
何食わぬ顔で提出していた。
返事が来ないなあと思っているうちに、
そのことさえ日々の慌ただしさに
かき消されていたのだが――
今日、ようやく返信が来た。
「報告書を受け取りました。
ありがとうございました」
いつもと同じ内容。
うーん、ラッキー。
どうやら私の大きなうっかりには
気づかれていなかったらしい。
思わず心の中でガッツポーズ。
昨日手配していた作業も無事に完了し、
お客様への報告も済ませた。
これで午前中のやることリストは、
きれいに全部消えた。たった1時間。
されど1時間。
もしこの余白がなければ、
メールを確認する時間すら
なかったかもしれない。
昨日考えた
「立ち止まって考える時間」の大切さが、
今日は少しだけ実感に変わった。
忙しければ忙しいほど、
走り続けるのではなく、
あえて立ち止まる時間を確保する。
それもまた、
自分を整えるために
必要なことなのだろう。
――などと、
自分の成長にちょっと満足していたら。
あら。1時間前のお店への出勤確認メールを、
すっかり忘れていた。
お店からの催促メールを見て気づく。
ああ、やっぱりこんなところにも、
うっかりがいたのね。
まあ、こちらは小さなかわいいうっかり。
「遅れて申し訳ありません」と一言添えれば、
きっと許してもらえるだろう。
すべきことをすべて終え、
少し早めに部屋を出た。
今日はスタートからのご予約がないから、
待機所へ着いたら
少しゆっくりできるかもしれない。
外へ出ると、風さんがやってきた。
「いよいよ出勤するのね」そうよ。
「今日も素敵な時間が
いっぱいあるといいわね」
うん、私もそう思ってるの。新しい新芽が、私の中に出てきたから。これから
出逢う素敵な時間、
その一つ一つの輝かしい彩りで染めながら、
大事に、大事に
育てていきたいと思っているのよ。
年輪を重ねた木にも、
また新しい芽は生まれる。
「じゃあ風さん、送ってくれてありがとう。
私、行ってくるわね。また出てくるとき、
迎えに来てね」
風さんにそう告げて、
私はいつもの待機所へ向かって歩き始めた。
一時間の余白から芽吹いた、
小さな新芽を心に抱いて。
余白に芽吹く🌱
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