一旦ホテルを出たというのに、
風さんが驚くほどの速さで、
私はまたホテルへと戻っていた。あなたの待つ部屋へ向かい、
そして次のドアが開いた。

迎えてくれたのは、
かわいらしい笑顔のあなた。
「わあ、久しぶり!」そう言って抱き合った。
たった二週間。
それでも毎週のように逢っていたからなのか、
ずいぶん久しぶりに感じる。
その気持ちがあなたも同じだったことが、
なんだか嬉しかった。

横にくっついて座り、
逢えなかった時間を埋めるように話した。
やがて部屋の灯りを落とすと、
三つのスポットライトだけがほのかに残った。
その光はまるで月明かり。
淡く妖艶な光の中で、
二人の心まで
ゆっくり溶け合っていくようだった。

あなたを「かわいい」と思う私と、
私を「かわいい」と言って
頭を撫でてくれるあなた。
その優しさが、私はとても好きだった。

そしてビールと枝豆で乾杯。
あなたは驚くほどいいペースで
グラスを空けていく。
私だって結構早いはずなのに、
今日は追いかける側。
そんなあなたの頼もしさに、
なぜだか私は少しだけ女の子に
戻ったような気がした。

二杯、三杯と重なる小麦色。
おかわりした枝豆の鮮やかなグリーンには、
あなたへの爽やかな恋心が
映っているようだった。

小麦色の誘惑に酔い、
月の光に心をほどいていたら、
長かったはずの時間はあっという間だった。

今日、二人で作った世界の色は、
きっと甘い小麦色。
そこへ差し込む、妖艶な月の銀色。
そして小さく揺れる、恋のグリーン。

「また来週も逢えたら嬉しいな」
そう言ってあなたと別れ、
ホテルを出ると雨がポツポツ降っていた。
持ってきたビニール傘にも、
ようやく活躍の場がやってきた。

「風さん、そこにいるの?」
「いるよ」次のホテルは、すぐそこ。
「じゃあ風さん、
次に出てくるのは午前0時だから。
それまで晩ご飯でも食べて、
ゆっくりしていてね」

雨の中、傘をさして歩き出す。
小麦色と月明かりの余韻を胸に残したまま、
私はまた、次のドアへ向かった。