寝ようと思ったときには、
もうあと30分ほどしかなかった。
アイマスクを出すのも面倒で、
ブランケットを肩からかけ、
座席を思いきり倒して体を沈めた。
眠りに落ちた瞬間さえ覚えていない。
突然、スマホの
大音量のアラームで目が覚めた。
念のため到着2分前に
セットしておいたものだった。
しばらくぼんやりしていて、
危うく降りるのを忘れるところだった。
ああ、やっぱり眠たかったんだ。
それなら余計なことをせず、
さっさと寝れば1時間半は眠れたのに。
今さら悔やんでも仕方がない。
駅の外へ出ると、むちゃくちゃ暑い。
朝から容赦なく日差しが照りつけている。
気温はすでに32度。
横浜よりずっと暑い空気に包まれながら、
そのまま会社へ直行する。
今日は10時からの会議に
遅れるわけにはいかない。
いつもなら「10分ほど遅れます」と
途中参加することもあるけれど、
今日は私の報告がメインだ。
定例会を少し早めに始めてもらい、
終わったらさっさと戻る。
資料は準備してもらっている。
あとは、
とにかく私の体だけ
10時には会議室へ持っていけばいい。
そんな段取りを頭の中で組み立てながらも、
心の片隅には、もう家の食卓が見えていた。
13時頃に会食が終わり、
少し片付けをしたら家へ帰れる。
帰れば、目玉焼きが待っている。
横浜ステイではゆで玉子ばかりだったから、
25日の朝以来、六日ぶりの目玉焼きだ。
家族はちゃんと私好みを覚えていてくれる。
裏はパリパリ。
黄身はカチカチではなく、
崩れないくらいのしっとり。
なんだか関西風の鰻の蒲焼みたい。
そう思った途端、
今度は鰻が頭に浮かんだ。
唯一のおうち晩ご飯になる日は、
鰻の蒲焼を買って鰻重にしようかな。
それとも、お客様からいただいた
新潟のへぎそばで、うな十そばもいいかな?
そんな食べ物のことばかり考えていたら、
今日のお昼の会食まで
同じようなものだったりして……
なんて想像まで膨らんでくる。
いやいや、のんびりしている場合ではない。
さあ、急いで会社へ行こう。
そう思った瞬間、ふと気づいた。あれ?
私はいつ仕事モードに切り替えたのだろう。
電車の中では眠くて仕方なかったのに、
駅を降り、
会社へ向かい始めた途端、
頭の中では会議の段取りを考えている。
モードって、
「切り替えよう、切り替えよう」と
力を入れて変えるものでは
ないのかもしれない。
場所が変わり、
景色が変わり、
自分の役割が変われば、
心はそれを感じ取って、
知らない間に次の自分へ切り替わっている。
どうやら私の心には、
ちゃんとオートモードがついているらしい。
心には、オートモードがあるらしい✨
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