17時少し前。
焼肉レストランへ向かうため、
家族と一緒に家を出た。

外にはまだ昼間の熱が残っている。
生ぬるく、むっとするような空気。
この分では、日が暮れても
暑さはしばらく居座るつもりらしい。

風さんもやってきた。
でも今日は私が家族と一緒だからなのか、
いつものように隣には並ばず、
少し離れたところからついてくる。
ふふ。
風さんにも、かわいいところがあるのね。

空を見上げた。
ほんの少し前まで、
限りなく透明に近い青の中で、
真っ白に輝いていた鱧落としのような雲。
その空はもう姿を変え、
薄墨を一滴垂らしたような
淡いグレーの雲に覆われていた。

空は目まぐるしい。
でも考えてみれば、
私の時間も同じだった。
キャリーケースを片付け、
4日から始まる横浜ステイの荷物をまとめ、
それでも少し時間が残ったからと、
今度はアイロンまで掛けてしまった。

結局、今日、本当に時間が止まったのは——
ベランダに出て、
あの空を見上げていた
ほんのひとときだけだったのかもしれない。
そんなことを思いながら家族と歩く。

お昼をたっぷりいただいたから、
まだそれほどお腹は空いていない。
けれど、お店に入って焼肉の香りを嗅いだら、
きっと話は別だろう。

今日は大好きなドイツの
ノンアルコールビールを飲もう。
塩上タンにミスジ。
ナムルもいいし、キムチも欲しい。
スープは何にしようかな。
隣を歩く家族も、
同じようなことを考えているのだろうか。

もっとも、いざ注文となれば、
私たちはきっといつもの顔ぶれに落ち着く。
量が少し増えたり減ったりするだけで、
だいたい決まったメニュー。

それでいい。
このお店を訪れるのは、二か月ぶり、
いや三か月ぶりだろうか。
久しぶりだからこそ、
いつもの味を、
いつもの家族と囲むことが楽しみなのだ。

街路樹の緑は美しく、
川からは涼しげなせせらぎが聞こえてくる。
景色だけを見れば、
なんて気持ちのいい夕暮れだろう。
あとは、この暑さだけ。

「ねえ風さん。
そこに遠慮してないで、
もう少しこっちへ来て。
今日はちょっと多めに
吹いてくれてもいいのよ」
家族と歩く私たちの少し後ろから、
風さんも一緒に、
夕食へ向かっていた。