久しぶりの焼肉レストラン。
家族と楽しく語らいながら食事をして、
帰ってきた。

結局、注文したものはいつもと同じ。
個室もなぜかいつもと同じ。
飲んだものも、メンバーも同じ。
でも、その「いつもと同じ」が、
今日はなんだかとても心地よかった。
ああ、我が家に帰ってきたんだな。
そんなことを、しみじみと思った。

2日のお墓参りのこと。
その日の夜に作ろうと思っている、
秋を先取りした晩餐のこと。
いろんなことを話して、
いろんなことを聞いた。

お肉が焼けると、
「ありがとう」
「おいしいね」
「そうね」
そんな何でもない会話が、
今日は妙に嬉しかった。

ずっと一緒にいたら、
きっと気にも留めないような言葉なのに、
しばらく離れていたからこそ、
その当たり前が胸に沁みた。

帰り道、
西の空は美しい赤銅色に染まっていた。
朝のピンクゴールドの空には、
始まりの光がある。
けれど夕暮れの赤銅色には、
少しだけ物悲しさがあって、
過ぎていく時間の儚さを感じさせる。

そんな空の下で、家族がふいに指をさした。
「あのピンク色の花、何だろう」
指さす先を見て、すぐにわかった。
「あれはサルスベリよ」
横浜で覚えた木だった。

「ピンクもあるし、白もあるし、
薄い桃色もあるのよ。
それにね、花言葉は『笑顔』なんだって」
そう言うと、
家族が私の顔を見て、にっこり笑った。

その笑顔を見た瞬間、思った。
これから私は、
サルスベリを見るたびに
今日を思い出すのだろう。
赤銅色の夕暮れ。
家族と囲んだ、いつもの焼肉。
そして、ごく当たり前の「おいしいね」

きっとサルスベリは、
これから私の中で、
家族の笑顔の花になる。