電話の音で目が覚めた。
お店からだった。
あれ?
アラームをセットしたはずなのに。
もしかして、また止めて二度寝しちゃった?
不思議に思いながら電話に出ると、
ご予約の時間が30分早まったとのこと。
時計を見ると19時50分だった。
18時少し前に出勤して、
ほとんどすぐ眠ってしまったから、2時間弱。
思った以上によく眠っていたらしい。
急いで支度をして外へ出ると、
雨がポツポツ降っていた。
半袖では少し寒い。
こんなに夜が冷えるなら、
持ってきたノースリーブのブラウスでは
心もとない。
いよいよアディダスの
ウィンドブレーカーの出番かしら。
今の服の上に
それを羽織った自分を想像すると、
あまりにもちぐはぐで、
ひとり笑ってしまった。
久しぶりの大通り公園。
本当は明るいうちに歩きたかったけれど、
暗闇の中、
雨に濡れた木々の緑が
ライトに照らされていた。
その姿には、
昼間とは違う粋な美しさがあった。
少しロマンティックでもあった。
そんな雨の道を歩きながら、
あなたの待つホテルへ向かった。
今日最初のドアが開きました、
甘いマスクに、素敵な笑顔。
そして、なんともいえない
柔らかな雰囲気をまとった
あなたが迎えてくださいました。
「森村さんに逢ってみたかった。覚えてる?」
もちろん覚えている。
ずっと以前から、
オキニトークで言葉を交わしていた人だった。「覚えていますよ。
だいぶ前からオキニトークしていましたよね。
やっとお逢いできて、私も嬉しいです。
こんな私ですが、
今日はよろしくお願いします」
そんな言葉を交わした時間は、
これから始まる
二人の時間を
そっと予感させるプロローグのようだった。
やがて、私はあなたに触れた。
時折、一言、二言と言葉を交わしながら、
あなたの心を探すように、
あなたの温度を感じるように。
そして、「こっちを見て」そう言われて、
あなたを魅た。
目と目が合った。
ただそれだけなのに、急に胸がドキドキした。
あなたの瞳にも、
同じものが揺れているように思えた。
触れることと、触れられること。
言葉を渡すことと、受け取ること。
それはまるで、
心と心のキャッチボールだった。
あなたの優しい触れ方は
私の心まで柔らかくしてくれて、
いつしか私は温かな胸に抱かれていた。
耳を澄ませば、あなたの鼓動が聞こえる。
その音を感じながら、
ほんの少し現実から離れて、
夢を見ているような時間を過ごした。
雨降る夜の、甘い恋のようなひとときだった。
ありがとう、あなた。
また逢えたら嬉しいな。
「また待っていますね」そう言って別れた。
外にはまだ雨が降っていた。
それでも私は、いつもの場所で日記を書いた。
胸の中には、
さっきまでの時間がまだ温かく残っている。
思い出すたびにドキドキする。
思い出すたびに、
胸の奥へじんわりと何かがこみ上げてくる。
心にも体にも甘いひととき。
やっぱり、こんな時間っていいな。
そう思いながら夜空を見上げると――
あ、風さんだ。「もう帰るところ?」
「そうよ。その前に、
ここで日記を書いていたの」
「どんな内容になったの?」
「そんなこと言わなくても、
私の顔を見ればわかるでしょ」
「ふふ、そうね」
風さんはそう言うと、
少し寒がっている私の周りを
ぐるぐると回った。
まるで今夜だけは
冷たい夜風になるのをやめて、
私を包む温かな風に
なってくれたみたいだった。
そして、ふと思い出した。
そうだ。あなたが「好きだった」と
言ってくださった、あの写真。
久しぶりにアップしちゃおうかな。
雨音の向こうに残った今夜の甘い余韻を、
そっと一枚の写真に重ねるように。
雨音にほどけた、甘い恋✨
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