眠りの底で
時を手放した

次に目覚めるなら
22時くらい

そう思っただけなのに
瞼をひらけば
21時58分

時計より先に
身体が夜を知っていた

バスタオルショールを肩にかけ
最後の夜へ出る

風は冷たい

雨とも呼べないほどの雫が
ときおり頬に触れ
まだ眠りの中にいる私を
ほんの少しだけ
こちら側へ連れ戻す

このぬくもりにも
ずいぶん守ってもらった

今夜洗って
ありがとうを干しておこう

明日は3時に目覚め
始発に乗る横浜の街が

まだ眠っているうちに
私は紀州へ向かう

蕎麦の湯気
久しぶりの笑い声

1か月ぶりの顔
まだ見えない明日が
もう夜の向こうで
小さく灯り始めている

あと少しだけ眠ろう

9日間を抱いたまま
もう一度
夜に身体を預けよう

そして4時

帰り支度をしながら
あの勇ましいイントロに
心を乗せるはずだった

けれど明日は日曜日

将軍は来ない

その代わりなのか
音声入力の隙間から
見知らぬ名前が
ひとつ転がり出た

虹色少年

誰なのかは
知らない

知らないままでいい

横浜最後の夜
冷たい雨の向こうには
もう旅立ちの朝がいる

風さんは静かに吹き

将軍は来ず
虹色少年だけが残った。