夢から覚めたのは、
無料購読分をすべて読み終えたときだった。
私はてっきり、5つほどのコンテンツで
コミック1巻分くらいなのだと思っていた。
ところが蓋を開けてみれば、
無料で読めたのは17コンテンツ。
18から先は有料だった。
そこでようやく現実に戻ってきた。
でも、新規会員登録なら70%オフ。
……買っちゃおう。
今日は和歌山へ向かっている。
そして帰りの電車もある。
全56巻ほどなら、
一気に鬼の世界を駆け抜けてしまうのもいい。
デジタル版にはまだ慣れない。
少し見にくいし、目も疲れる。
それでも次へ、
また次へと指が動いてしまう。
花嫁が窮地に陥る。
誰かに傷つけられる。
すると鬼の若様が現れる。
青い炎を放ち、
花嫁を傷つけた者を圧倒する。
いいな。
守られているって。
そんなことを思いながら若様を見ているうち、
遠い記憶の中から、
ひとりの姿が浮かび上がってきた。
小学生生の頃だっただろうか。
夢中になったコミック
『悪魔の花嫁』のデイモス。
デイモスもまた、
人間の男性の「美形」という言葉だけでは
収まらなかった。
美しいのに怖い。
怖いのに目を離せない。
人ならざる存在だからこその妖艶さ。
そして、人間の女性を愛することで、
超越した存在に
「愛」という弱点のようなものが
生まれていく。
今、鬼の若様に感じているものと、
どこかで重なる。
怪しいまでに美しい。
怪しいまでに恐ろしい。
怪しいまでに冷酷。
なのに、愛するただ一人には、
怪しいまでに優しい。
だから私は実写より漫画が好きなのだろう。
そして、もしかすると漫画以上に
小説が好きなのかもしれない。
姿をすべて与えられてしまわなければ、
その余白に自分だけの姿を
描くことができるから。
今回『鬼の花嫁』に
これほど胸をキュンキュンさせているのは、
新しい好みを見つけたからでは
ないのかもしれない。
ずっと昔、デイモスによって一度開かれた扉。
その向こうにあった
「人ならざる美へのときめき」が、
何十年もの眠りから
目を覚ましたのだろうか。
美しい。
でも実際にはいない。
触れることもできない。
それなのに、
私だけの想像の世界には、
確かに存在している。
すべてを見せないからこそ、
美しさには果てがない。
デイモスにも鬼にも、
そのくらいの「届かなさ」が似合う。
人間を、超越したものだから……。
そして電車は、まもなく和歌山へ。
いったん鬼の世界の扉を閉じよう。
帰りの電車で、
私はきっとまた、その扉を開く。
妖しきもの、胸に還る✨
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