いつもとは違う道を、
なぜか今日は歩いていた。
帰り道は急いでいるはずなのに。
いつもなら、
この細筋のひとつ隣を通って帰る。
それなのに今朝の私は、
何かに呼ばれるようにこちらへ曲がった。
そこには、若かった頃の
私が暮らしていた場所がある。
もうずいぶん昔のことなのに、
道というものは不思議だ。
頭で思い出そうとしなくても、
足のほうが先に覚えている。
あの頃の私は、
どんな気持ちでここを歩いていたのだろう。
何を考え、何を願い、
何に迷っていたのだろう。
今の私から見れば、ずいぶん若い。
けれどその頃の私は、
その頃なりに一生懸命だったはずだ。
そして今朝。
少し痛む足を抱えながら、
私はその道を歩いている。
いつも朝に立ち寄り、
静かに手を合わせる場所にも、
今日は帰り道でもう一度出逢った。
行きにも会い、帰りにも会う。
まるで、
「今日はここを通って帰りなさい」
と誰かに言われたようだった。
急いでいたはずなのに、
不思議と焦らなかった。
少しくらい遅れてもいい。
そう思えたのは、
今日という朝が、
時間よりも大切な何かを
私に魅せようと
していたからなのかもしれない。
若い日の私が歩いた道を、
今の私が歩く。
同じ道なのに、
魅えている景色はきっと違う。
でも、変わらないものもある。
足の裏に残っている記憶。
胸のどこかに残っている気配。
そして、手を合わせるときに生まれる、
あの静かな心。
今朝の寄り道は、
昔へ戻るための道ではなかった。
昔の私を拾い上げて、
今の私の中へ連れて帰る道だった。
足、記憶を辿る✨
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