業者さんとの打ち合わせは、
ちょうど1時間ほどで終わった。
外では軽い雨が降ったりやんだりしている。
さあ、今から山を片付けよう。
そう思って、
朝から気になっていた仕事を改めて眺めてみた。
もっと高い山になっていると思っていたのに、
優先順位をつけて、
今日済ませておいたほうがいいものと、
後日に回してもいいものに
振り分けてみると――
なんだ。
ひと跨ぎできそうな土手くらいだった。
これだけか。
そう思ったら、
なんだか急に肩の力が抜けた。
すぐに済ませてしまおうかと思ったけれど、
その前にちょっと休憩。
空色の手帳とスマホを持って、
会社のカフェスペースへ向かった。
コーヒーでも飲みながら、
少しぼんやりとスケジュールを眺めておこう。
次から次へとやることがあると、
肝心な何かがスコンと抜けることがある。
過去に何度、このちょんぼをやったことか。
だからこんな時間も、きっと仕事のうち。
それにしても、
会社のカフェスペースでのんびりするなんて、
本当に久しぶりだった。
出社すれば、
いつも朝から慌ただしく時間が過ぎていく。
こうしてコーヒーを前にして
外を眺める余裕なんて、いつ以来だろう。
ガラス越しに空を見る。
山と雲の境目、
その少し上。
濃いグレーの細長い雲から、
何かがぽたり、
ぽたりと垂れているように魅えた。
墨?
まるで雲が筆を持ち、
空の上に何かを書こうとしているみたい。
何を書くつもりなのだろう。
今日は雨模様で、
「空高し」と呼びたくなるような
澄んだ青空ではない。
それでも、よく見れば、
すーっと刷毛で引いたような筋雲がいる。
少し大きな羊雲もいる。
その間には、魚の鱗やいわしの群れのような、
小さな白い雲たちもいる。
ちゃんと季節はそこにいるのに、
蒸し暑さに隠れて、
なかなか気づいてもらえない。
だから雲は、
自分で名札を書こうとしているのかな。
ぽたり。
またひと雫、墨が落ちたように見えた。
私はコーヒーを飲みながら、
その続きをしばらく眺めていた。
さて。
雲は空に、何と書くつもりなのだろう。
雲、墨を垂らす✨
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