家族との語らいのひととき、
今日の晩餐も終わった。
食べ終えれば、
いつものように自然な流れで
役割を分けながら後片付けをする。
特別な話をしたわけではない。
ただ、ぽん、ぽん、と
行き交うさりげない会話のキャッチボールが、
なんだか心をくすぐった。
「今日のだし巻き、特に美味しい」
「さんまも骨がないから食べやすい」
そして、
「朝からずっと手作りのお味噌汁、ありがとう」そんな一言一言が嬉しかった。
またしばらく、一緒に食べる晩ご飯はお預け。
ちょっぴり寂しい。
でも、こんな距離感が
ちょうどいいのかもしれない。
少し離れている時間があるからこそ、
また一緒に囲む食卓が愛おしくなる。
「最後の晩餐」なんて言いながら、
いつもの家で、いつものように食べる。
それがこんなにもあたたかい。
やっぱり、家で家族と食べるご飯っていいな。
そして食後は、再び『鬼の花嫁』の世界へ。
さらさらさら……。
気づけば55巻まで読み終えていた。
あと少し。
でも、その先はまだない。
ああ、こういうの、ちょっと困る。
続きが読みたいのに。
けれど読み終えて、ふと思った。
私はもともと、
鬼の若様に恋焦がれて読み始めたはずだった。
物語が進み、
花嫁との絆が深くなるほど
若様の優しさも愛情も魅えてくる。
もちろん、今だってかっこいい。
なのに——。
私がいちばん胸を撃ち抜かれたのは、
やっぱり最初だった。
怪しいまでに美しく、非情なほど冷たい。
赤い瞳。
青い炎。
けれど、愛するものだけは何があっても守る。
愛するものを傷つけた者に、
その痛みを思い知らせるように青い炎を放つ、
あの姿。
ああ、もう一度逢いたい。
だから続きを待つより、
最初からもう一度読んでしまおうか。
あの、
胸がキュンキュン鳴っていた場所へ
戻ってみたい。
そんなことを思いながら、
ベランダから夜の帳が下りた空を眺めた。
黒い雲の隙間から、光がこぼれている。
しかも不思議なことに、
その光は二筋に分かれていた。
あれ——。
まるで若様が両手を伸ばし、
青い炎を放っているみたい。
ふふっ。若様、そこにいるのかな。
なんだか、素敵。
もう少しだけ読んだら、今日は早めに眠ろう。
次は原作も読んでみたい。
ちょっと探してみようかな。
明日の午後には、また横浜へ旅立つ。
本当なら自宅でのんびり
旅支度をするつもりだったのに、
9時半から来客がある。
その時間だけは会社へ行かなければならない。
話が長くなったら嫌だなあ。
できれば30分で、すぱっと切り上げたい。
でも、それは明日のこと。
今夜はもう、時間を追いかけなくていい。
家族の「美味しい」が残る食卓。
若様の青い炎が残る胸の奥。
そして、
雲間から二筋に分かれてこぼれる夜の光。
少し離れるから、また一緒にいたくなる。
物語が終わるから、
もう一度最初のときめきに逢いたくなる。
離れることは、
寂しさだけではないのかもしれない。
もう一度逢いたいと思える余白を、
そっと心につくってくれる。
さあ、今夜は早く眠ろう。
できることなら夢の中で——
鬼の若様の花嫁になって。あの青い炎に守られながら、
朝までゆっくり眠っていたい。
灯り、胸に残る✨
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